メッツなどで通算311勝を挙げ92年に殿堂入りしたトム・シーバー氏が8月31日に75歳で死去した。米野球殿堂によると、死因は認知症と新型コロナウイルス感染に伴う合併症だったという。

サイ・ヤング賞に3度輝くなど多くのタイトルを手にしたシーバー氏は「ミラクル・メッツ」と呼ばれ旋風を巻き起こした69年のメ軍で25勝を挙げ、ワールドシリーズ制覇を達成。「ビッグレッドマシン」を擁する強豪で知られたレッズでも活躍し、2球団で計5度のポストシーズン進出を果たした。奪三振は68年から9年連続で200個以上、70年には1試合で19個を記録。通算3640奪三振は史上6位。浮き上がるように見える快速球を駆使し、三振の山を築いた。

74年にはメ軍、78年にはレ軍の一員として、日米野球で2度来日した。巨人と対戦した78年の試合では、7回まで投げ勝利投手になったが4失点したことを悔やみ「最高の投球を見せられなかった。日本のファンにおわびしたい」とファン思いの一面を見せた。堀内恒夫氏に赤いグラウンドコート、河埜和正氏にユニホームをプレゼントするなど、海を越えた選手交流にも積極的だった。

殿堂入りの際は、当時の得票率新記録となる98・8%で資格1年目で選出。引退後は解説者として人気を博したが、昨年3月に病気のため公の舞台から退くと発表していた。マンフレッド・コミッショナーは文書で「トムは、国民の娯楽を代表する紳士だった」と追悼した。