ドジャースは8日(日本時間9日)、元監督で特別アドバイザーのトミー・ラソーダ氏が7日(同8日)夜、自宅で心肺が停止し、病院へ搬送された後に死去したことを発表した。93歳だった。

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ラソーダさんの左手の人さし指はくの字に曲がって伸びない。「昔からカーブを投げ過ぎたからな」と笑っていた。

シーズン中も昼すぎにドジャースタジアムにやって来て、若手選手の特打ちで打撃投手となり汗だくで投げ、一打ごとにダミ声を張り上げ何か叫んでいた。

現役時代はほぼマイナーの左腕投手で、メジャーでは通用しなかった。キャンプの時、ラソーダさんに「メジャーとマイナー選手の決定的な違いは何か」と質問したことがある。彼は「アジャストメント(順応する力)」と即答した。「メジャーでは2回の失敗は許される。3回同じ過ちをするやつはマイナー行きだ。メジャーリーガーは2回ダメでも、3回目には必ず順応してくる」と話した。監督として名将と呼ばれるまでになった人の神髄を見た気がした。

ドジャースは多国籍軍と言われるほど、さまざまな国の選手を受け入れていた。元オーナーのピーター・オマリーさんの心の広さもあったが、白人、黒人はもちろんメキシカンらの中南米系、そしてアジア系。多様な選手をまとめる力になったのはラソーダさんの大きな功績だ。その中に伝説のバレンズエラも、野茂英雄もいる。

自らもイタリア系。決して上手な英語ではなく、放送できない汚い言葉もわめき散らし、感情も爆発させた。だが、夢だけ持って集まってくる各国の若い選手たちに、たとえ英語がうまく話せなくても、ベースボールへの愛と努力を惜しまず、闘志さえ誰にも負けなければ必ず成功することができるということを、時に道化師になり時に感情を爆発させ、でも根底は温かく振る舞って伝え続けたのがラソーダさんではなかったか。

野茂もそれを分かっているから心から尊敬していた。【元ロサンゼルス支局=南沢哲也】