【アナハイム(米カリフォルニア州)4日(日本時間5日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(26)が、世界一の選手への1歩を踏み出した。ホワイトソックス戦に「2番投手」で出場。DHを解除した“リアル二刀流”で、投手では4回2/3を投げで7三振を奪い、2安打5四球で3失点(自責1)。勝利投手の権利目前で捕逸に泣き、追いつかれて降板したが、最速101・1マイル(約162・7キロ)をマークした。打者ではメジャー今季最速の打球速度&自己最長飛距離となる豪快な1発を放ち、3打数1安打1打点。歴史的な一戦で、度肝を抜いた。

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ものすごい打球、ものすごいスピード感の「大谷劇場」だった。まずは打者だ。「2番」で打席に入った1回1死、ホ軍の右腕シースの初球97マイル(約156キロ)高め直球をフルスイング。破裂したような音に観客は一斉に立ち上がった。右中間への特大弾は先制の2号ソロ。ベースを回り、三塁コーチの手を強くたたいた大谷には、気迫があふれていた。「ほぼ完璧な内容ではあったので、打席に関しては言うことはないかな」。自画自賛だった。

投手でもノリに乗った。「緊張はしました」と立ち上がりは力んだ。「初戦なので、すごい力入ってるな」と感じながら、徐々に落ち着いた。100マイル(約161キロ)超えを9度、3回には最速101・1マイルを計測した。「全体的にはすごくいい球が多かった」。4回2死一、二塁の場面では7番ロベルトを92・6マイル(約149キロ)のスプリットで空振り三振に仕留め、拳を握って、ほえた。

今季メジャーの先発投手では初めて「大台」100マイルの直球を投げ、最速の打球で本塁打をかっ飛ばした。メジャーの歴史に名を刻むリアル二刀流で、潜在能力を最大限に発揮した。「打席に関しては言うことはないと思う。(投手では)5回、少しのところなのかなと。1つ公式戦でこういう形でできたというのは良かったかなと思います」。

これだけでは終わらない、どんでん返しの幕切れもあった。5回に暴投で初失点し、なお2死二、三塁フルカウントから、決め球スプリットを後逸した捕手の失策で追いつかれた。さらにカバーに入った本塁上で走者と交錯し、転倒。衝突の際の痛みに顔をゆがめたが、幸い軽症で試合後は「問題ないとは思います」と明るい表情で明かした。とはいえ、勝利投手の権利目前での“ハプニング”。「最後も三振ではあるので、やりきったと言えば、やりきってるんですけど…。欲をいえばそこまでいく必要がないのかな」と、2死からの失点を悔やんだ。

それでも、サヨナラ勝ちの瞬間はベンチ最前列で両拳を突き上げ、チームの勝利を喜んだ。試合を通じ、感情を思う存分に爆発させた。二刀流で開幕し、わずか2試合の登板に終わった昨季とは違う。チーム関係者は「常に上を目指し、世界一の選手になりたい思いが伝わる」と言った。そんな姿をファンも応援する。大谷は「ケガはつきものだと思いますし、たまたま大きいケガをしましたけど、まだまだ頑張りたい」と前を見据えた。完全復活の先にある世界一のプレーヤー-。夢あふれる旅の幕が開けた。

◆日本では 大谷は日本ハム時代、DH制の試合で投げ、打席にも立ったケースが公式戦で7試合(先発6試合)CSで2試合(先発1試合)ある。先発試合は1完封を含む7戦全勝だった。16年7月3日ソフトバンク戦では「1番・投手」で出場し、初回に中田の初球を本塁打。投手で史上初の先頭打者本塁打となった。同10月16日のCS(対ソフトバンク)では9回にDH解除で救援登板し、日本球界最速の165キロをマーク。17年10月4日オリックス戦では、51年藤村富(阪神)以来66年ぶりとなる「4番・投手」で先発出場し、打って1安打、投げては10奪三振で完封した。

◆日本人単独3位 大谷の大リーグでの通算本塁打は49本目となり、城島健司の48本を上回り日本選手の単独3位。1位は松井秀喜の175本、2位はイチローの117本。日本時代の通算48本塁打を1本上回り、日米合計97本となった。