大リーグは今日21日(日本時間22日)から、投手に不正使用が疑われる粘着物質の取り締まりを強化する。全体の打率が2割3分台と「投高打低」が顕著な今季のメジャー。一部投手が投球の回転数を上げるために不正使用している疑惑を受けたものだ。先発、救援とも徹底的にチェックされ、違反者の罰則適用も厳格化することで、「スパイダータック」など新物質の横行に歯止めをかけたい方針。一方、シェービングクリームなどは使用を黙認されていたところもあり、現場は大混乱。元メジャー投手の上原浩治氏(46)と佐々木主浩氏(53)が自らの経験から声を上げ、粘着物質の現状、現役選手の反応などを深掘りする。

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メジャーの投手にとって、ボールが滑らないように対処するのは暗黙の了解である。私自身、渡米1年目にチームメートから『こうした方がいいよ』と習った。勧められたのが、シェービングクリームと手のローションなどで、グラブにつける選手もいたが、私はブルペンで投球練習前に手に塗って、マウンドに向かった。

感覚的には滑るというより、抜ける感じだった。特に、変化球はひどかった。真っすぐは人さし指と中指を縫い目にかけるから、多少はコントロールが利くが、どちらかの指が縫い目にかからない変化球はとにかく抜ける。ピッチャーの指先の感覚は非常に繊細で、1度気になり出したら、止まらなくなる。

ロジンバッグも日本よりベタベタしていて、汗をさわって触れると多少ベタベタするが、それだけでは対応できなかった。気候もまちまちで、乾燥した球場では悲惨だった。しっくりくる日本のボールとの違いは明らかで、国際試合のたびに日本の選手が苦労する姿が物語っている。

一番の問題は滑るボールで、規制する前にボールを改良すべきである。もちろん、回転数が上がるなど、度を超えるものは問題外だが、シーズン中の新ルール適用はもっての外。すっぽ抜けて、死球が増える危険性もある。きちんとアンケートなどを取った上で選手の意見を聞き、この問題に取り組むことが必要である。(日刊スポーツ評論家)