佐々木主浩氏(53=日刊スポーツ評論家)が、エンゼルス大谷翔平投手(27)の今季の投球フォームを分析した。この日のマリナーズ戦は7回1失点と好投。自身初となるメジャーでの2ケタ勝利はならなかったが、好投を続ける裏には、改良されたフォームにヒントがあると解説。「タメ」「テークバック」「体重移動」「下半身」をポイントに挙げて絶賛した。

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全体的に見て、理にかなった素晴らしいフォームで投げられている。前半戦の途中から後半戦の安定した投球は、このフォームに理由があると感じた。これならコントロールの心配もないし、安定した投球を続けられるだろう。

<タメ>

まず、(2)と(3)で真っすぐ立てている。投げる上で基本だが、非常に重要。ぐらつくこともないし、しっかりと右足に体重を乗っけられている。(4)では右足の付け根のところにしっかりと力がたまって、(5)の時にはしっかりと右足の内側に力がたまっている。顔の位置も後ろに残っていて、タメができている。

<テークバック>

(5)を見れば分かるが、右腕を下まで下ろさず、肘を少し曲げた状態からトップに持ってくる。パドレスのダルビッシュを参考にしたのだろう。以前の評論で、テークバックの小ささを指摘したが、下まで下ろせばもう1テンポためないといけなくなる。今のフォームでそこまで持っていこうとすれば、(7)で右肘が下がる可能性があるので、今の形が合っているだろう。

(6)、(7)では肩のラインが真っすぐになっている。左肩が上を向くこともないし、右肩も下がっておらず、(7)の時には右肘が肩のラインまでしっかりと上がっている。体が突っ込んだりすると右肘が下がったりするが、肩のラインまできているから非常に安定しているし、タイミング良く投げられている。

<体重移動>

(5)~(8)までの体重移動がスムーズで、しっかりとボールに乗っけられているので、ボールに力が伝わっている。(7)、(8)の胸の張りも素晴らしく、(8)の時に左膝の上のところに顔があるのもいい。左足に体重が乗っかっている証拠で、(10)を見ても、それがしっかりと分かる。仮に(8)と(9)の間にもう1コマあれば、完全に左膝の上に顔が乗っかっているだろう。

シーズン前、大谷の課題はコントロールと指摘した。数字を見れば明らかで、6月までは60投球回で35四球と制球が乱れる場面もみられたが、7月以降は70回1/3で9四球。球の速さ、力はメジャーでもトップレベルで、ゾーンで勝負できるかだったが、制球力の安定とともに成績も上向いた。

<下半身>

コントロールが良くなった理由は、(5)~(7)の下半身にもある。今季の春先は、バランスを崩したりした時もあったが、前に突っ込むこともないし、(6)~(8)では腰の位置がずっと変わらず、力が乗っかっている。腰の位置が変わらないのは、しっかりと下半身を使えて投げられているからで、下半身の力が弱ければブレが生じる。

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20代前半の頃は、(9)のところでこんなに体が後ろに残っていなかったと記憶する。跳ね上がりがもう少し早かったが、今は投げる時にまだ右足がついている。腕もしっかりと後ろまで振れているし、巻き付いているので腕が振れている証拠だろう。

繰り返しになるが、この写真を見る限り、本当に素晴らしいフォーム。体の上下運動もないし、しっかり割れを作って投げられている。特に(4)~(8)までは体の使い方、タイミング、バランスともに完璧。フォームの改良がコントロールの向上に直結し、結果に表れている。(日刊スポーツ評論家)