黒バンドが投手大谷を支えてきた。練習時にはほぼ毎回、右肘に着用。

疲労の蓄積を1日の負荷量で算出し、コンディショニング管理に活用した。科学的野球トレーニング施設の「ドライブライン・ベースボール」社製で、名称はパルス(旧モータス)。現在はMLBやプロ野球、アマチュア球界でも幅広く浸透している。商品流通の担当者・八木一成氏は大谷の活躍について「1年間、投げ抜いて欲しいと願いながら、オーバーワークでケガをしないか、ハラハラしていました」と心境を明かした。

9月15日、練習中に右肘に張りを感じて登板予定が2日延期となったが、大きな問題なく先発ローテーションで投げ続けた。八木氏は「大谷選手は自分自身で体のことをしっかり理解していると思います。そこに何%かでもパルスのフィードバックが生かされているなら、大いに意味がある取り組みだったのかなと思います」。人の感覚とデータの組み合わせが、歴史的なパフォーマンスを可能にした要因の1つとなった。

“大谷効果”か、パルスの売り上げは今年4月に前年比で362%増、5月はさらに30%増で過去最高を記録した。高校野球で投げすぎの問題がクローズアップされることもある中、八木氏は「パルスで負荷や疲労など客観的なデータを見ながら、大事に才能を育んで欲しい」と願う。チームの管理下で登板間隔が決まっていた大谷も、今季は状態の自己申告と監督との密な会話で本格開花した。その中で、黒バンドの存在も成功には欠かせなかった。【斎藤庸裕】