メジャーリーガーが、野球少年・少女たちと一緒になって笑った。15日、静岡・下田市内で行われた敷根公園少年野球教室。レッズ秋山翔吾外野手(33)が打席に入り、マウンドには松崎野球スポーツ少年団の後藤嵐君(11)が上がった。結果は右前打を放った秋山の勝利。それでも嵐君は「あと3球くらいは投げたかったけど、楽しかったです」と満足そうな表情だった。

チームでは捕手兼投手。同地での野球教室に参加するのは2回目だが、中学で野球を続ける予定はないという。進学予定の地元の中学校では部活動がバスケットボール、バレーボール、テニスのみで、野球部が存在しない。指導者の不足が原因だ。

スポーツが盛んな静岡でも、野球人口の減少は顕著となっている。静岡県野球連盟・下田支部少年部の飯田和也さん(48)によれば、約40年前と比べて少年野球のチーム数は4分の1ほどで「野球人口は極端に減っていて、さらに加速していくと思います」と危機感を抱く。少子化が進むことでチームの人員不足を招き、試合も十分にできない。野球を始めたとしても、楽しさを感じるまで続ける子どもたちが少なくなっているという。

野球離れが進む中、下田市での野球教室は今年で4度目。秋山の他に、阪神板山祐太郎外野手(27)や西武ライオンズ・レディースの山崎まり内野手(32)、女子野球アメイジングのサウスポー笹川萌投手兼内野手(26)も参加した。キャッチボールや守備練習、その後はサイン会や写真撮影など約3時間の交流。秋山は「僕ら野球選手としては野球を楽しんでもらいたいっていう思いしか伝えられないですけど、またこのグラウンドで会えるように頑張っていきたい」と、4人の思いを代弁した。

大事なことは、技術のアドバイスだけではない。「小学生のうちは楽しさがもっといっぱいあっていいと思う。勝敗も絶対必要ですけど、その前段階で裾野を増やす。野球って楽しいとか、いい思い出だったと言えるように」との願いがある。都市部以上に過疎化が進み、プロ野球を気軽に見る機会も少ない地方都市。子どもたちが野球を継続するための環境にも課題はあるが、まずは楽しく-。野球教室の意義は、そこにもある。