過去、NPBを経験せず、米国へ渡った選手でメジャーデビューを果たしたのは、マック鈴木、田沢純一、多田野数人の3人しかいない。それほどマイナーからはい上がることは簡単ではない。

かつて、その劣悪な環境から「ハンバーガー・リーグ」と言われたマイナー・リーグは、近年、食住面などの改善に取り組み、トレーニング施設なども徐々に充実してきた。だが、日本人選手にとって、文化や言葉の違い、バスでの長距離移動、食生活など、依然として戸惑うことは多く、順応するまでにある程度の時間を要するだろう。

ただ、適応するために「慣れ」が必要であっても、マイナーでプレーすることにどっぷりと「慣れて」しまうと致命傷になりかねない。マイナーを「ハングリー」と表現することも多いが、世界中から集まる若い選手たちは、体力、技術、レベルとも千差万別。野球への取り組み方やモチベーションも、個人差は大きい。意識の高い選手もいれば、素行不良の悪ガキも少なくない。練習方法にしても、米国流の長所を取り入れる一方で、周囲に流されない強い信念が必要とされる。

昨季、全レベルのマイナーを経験したダイヤモンドバックス吉川は「成績も大事ですが」と話した一方、「自分のスタイルがどういうものか」を重要視してきたという。育成目的のマイナーでは、チームメートでもライバル。体力、技術だけでなく、メンタル面を磨くことが、メジャー昇格へのカギと言ってもいい。【MLB担当=四竈衛】