【アーリントン(米テキサス州)15日(日本時間16日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(27)が、1試合2発で待望のアーチをかけた。

「1番DH」で出場したレンジャーズ戦の第1打席、初球を捉えて右中間席へ今季1号の先頭打者弾。5回の第3打席は右翼へ完璧な2ランを放ち、5打数2安打3打点で逆転勝ちに貢献した。この日は黒人選手初のメジャーデビューをたたえる「ジャッキー・ロビンソン・デー」で背番号42を着用。メジャーリーグの歴史的な記念日で初めて本塁打を放ち、二刀流・大谷が躍動した。

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歴史的な記念日に、大谷が目覚めた。1回の第1打席、初球の高め直球を高々と打ち上げた。右中間スタンドへ届いた一撃は開幕31打席目で飛び出した待望の22年シーズン第1号。さらに3点を追う5回に、右翼へ飛距離415フィート(約126・5メートル)の特大2ランをかました。「2本打ててうれしい。(2本目は)負けている展開だったので、流れを取り戻して、最終的に勝てたことが自分にとって一番大きかったかなと思います」。チームの逆転勝ちにつながった2発を素直に喜んだ。

背番号17ではなく、42番でダイヤモンドを回る光景は、いつもとは違った。メジャーリーグの歴史で、初めて黒人選手が誕生した4月15日。これをたたえ、「ジャッキー・ロビンソン・デー」と称して、全員が背番号42番を着用した。黒人選手として道を切り開いたロビンソン氏。一方で、今季から投手兼DHで出場可能な「大谷翔平ルール」が導入され、二刀流として新たな歴史を刻んでいる大谷。先人の功績を背に、同氏のデビュー75周年の記念日に初めて本塁打を放った。

すると、新時代を築く男は新たな儀式で祝福された。今季1号後にベンチへ戻ると白いカウボーイ・ハットをかぶせられ、同僚と笑顔でハイタッチ。チームの盛り上げ役を担う「クオリティー・コントロール・コーチ」のティム・バス氏が帽子をベンチに持ち込み、数日前から選手が使い始めた。この日も本塁打を放った全4選手が同様の儀式で迎えられた。大谷は2度、カウボーイ風に変貌。珍しい姿に盛り上がったチームはレ軍に逆転で競り勝った。

前日まで開幕から30打席ノーアーチが続き、大谷は打撃面で「動きだしの準備が少し遅れている」と課題を挙げていた。それをたった1日で修正し、しかも、登板の翌日に2発。2本目は手応えも十分だったようで、本塁打を確信してバットを放り投げた。特別な1日にがっちりつかんだ感覚。これをきっかけに、本領発揮の予感が漂う。

▽マドン監督(登板翌日に2発を放った)「そこがポイントだ。登板と同時に打って、翌日も試合でプレーする。それでいて、フィジカル的にも問題ない。素晴らしい。昨年のように、打ち始めるだろう」

▼大谷が今季初本塁打となる先頭打者初球アーチを含む2発。大谷の先頭打者本塁打は通算5本目だが、初球を打ったのはメジャーでは初めて。日本人選手のプレーボール本塁打は、07年6月19日岩村(デビルレイズ)以来4人、5度目。

▼大谷の1試合2発は昨年7月2日以来、通算7度目。マルチ本塁打を通算7度は松井秀の6度を抜き、イチローの7度に並ぶ日本人最多回数となった。ちなみに、登板した翌日に2本塁打は昨年6月18日タイガース戦(前日6回1失点で勝利)に次いで2度目。

▼ジャッキー・ロビンソン・デー(4月15日)に本塁打した日本人選手はイチロー、松井秀に次ぎ3人目。イチローは07、09年、松井秀は08、10年に打ち、ともに計2本。

◆ジャッキー・ロビンソン・デー 黒人初のメジャーリーガーであるジャッキー・ロビンソン氏(ドジャース)をたたえ、同氏がデビューした1947年4月15日を記念し、04年から毎年4月15日開催の恒例行事となった。全球団で永久欠番となっている背番号「42」を選手や監督、コーチら全員が着用し試合を行う特別な日。今年はデビュー75周年の節目で、関連行事も盛大に行われた。