エンゼルス大谷翔平投手(27)が「3番DH」で出場したマリナーズ戦で、大乱闘が起こった。2回、エンゼルスの先発ワンツが4番ウィンカーに死球を与えた。これをきっかけに両軍の激しい取っ組み合いが始まり、大谷は乱闘の輪の後方で敵軍のコーチや自軍スタッフを制止。両監督と選手6人、合計8人が退場となった波乱の試合はエ軍が1点差で競り勝ち、2連敗でストップ。ア・リーグ西地区3位に再び浮上した。

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本塁後方になだれ込むように両軍の選手、コーチらが取っ組み合いになった。死球を受け、激高するマリナーズのウインカー。エンゼルスは右手首手術を受けてギプス姿のレンドンが先陣を切り、左手でウインカーの顔を押しのけた。こうなると、もはや制御不可能。瞬く間に大乱闘に発展し、試合が約18分間中断した。

ベンチにいた大谷は途中から加わり、乱闘の輪の後方でエキサイトするコーチやスタッフを羽交い締めして制止した。乱闘に本格的に“参戦”したのは、プロ入り後初めてだった。水原通訳も大谷を守るように、さらに後ろから抑えようとした。

不可解な動きはあった。エ軍は予定されていた先発を左腕スアレスから中継ぎの右腕ワンツに急きょ変更。だが、グラウンド上でウオーミングアップするワンツの横で、先発回避となったはずのスアレスも体を動かしていた。1回1死、ワンツの投球が2番ロドリゲスの頭部へすっぽ抜けた。これに審判団が集まり、両軍に警告が言い渡された。その間、スアレスはブルペン投球で準備をしていた。

2回、先頭ウインカーへの初球が再び死球で、大乱闘へ。中断後、スアレスが2番手で登板し、まるで先発かのように、7回まで6イニングを投げた。米メディアによれば、マ軍の先発ゴンザレスは「フリオ(ロドリゲス)への投球、試合直前の投手変更。彼らの意図は明らかだった」と話した。一方で、2与死球のワンツは「初めての先発で気分が高まっていた。(顔や手に)汗をかいていた」と弁明した。

伏線は前日の9回、マ軍のスワンソンがトラウトの頭部付近へ暴投したこと。完全な報復か定かではないが、退場処分となったネビン監督代行は「同地区のライバルと10日間ほどで8試合も戦っていれば、起こるようなこと。時に醜い時もある。それが今日、起こっただけ」と淡々と振り返った。

大谷は四球で2度出塁したが、無安打。連続試合安打が5で止まった。同地区のマ軍戦はまだ11試合も残す。やられたらやり返す-。メジャーの世界では暗黙の行動とはいえ、晴天で家族連れの多い日曜のゲームに水を差す大乱闘だった。【斎藤庸裕】

◆大谷と乱闘 取っ組み合いの乱闘に居合わせたのはプロ入り初めて。日本ハム時代は13年6月の広島戦に登板した際、死球をぶつけたエルドレッドが激高し、ヘルメットをたたきつけて詰め寄ってきたが、一塁・稲葉が間に立って場はおさまった。また16年の日本シリーズ(広島戦)では、チームメート岡(現ロッテ)の死球がきっかけで両軍がベンチを飛び出し、大谷も大きな声を発していた。メジャー移籍後は、昨年5月アスレチックス戦で大谷が投じた内角球に打者が怒り、乱闘になりかけたほか、同9月のホワイトソックス戦では、右ふくらはぎへ受けた死球が故意死球と判定され、退場者が出る騒動となった。ただこのときも、当の大谷は笑顔で一塁へ向かっていた。

○…退場処分となった守護神イグレシアスは、怒りが収まらない様子でヒートアップした。両軍の大乱闘が収まった頃、ベンチからスナックボックスを担ぎ出し、フィールド上へぶちまけた。さらに自軍ベンチでも大暴れ。コーチ陣になだめられながら、ダッグアウト裏へと引き揚げた。試合後は「僕はウインカーに対して何も言っていない。何もしていないのに退場となった。だから、動揺した」と冷静に話した。

大谷翔平は2打数無安打2四球 死球めぐり大乱闘 エンゼルス逆転勝ち/詳細>>