【デンバー(米コロラド州)23日(日本時間24日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(28)が日本人メジャーの歴史を刻んだ地で、節目の1発を放った。ロッキーズ戦に「2番DH」で出場し、5回に右翼へ25号ソロ。2年前、初出場の球宴で史上初の二刀流を披露したクアーズフィールドで、日米通算200号に到達した。キング争いで2位に6本差は自身最大リードも、チームは痛い逆転負けで3連敗。マイク・トラウト外野手(31)との「トラウタニ弾」も、今季7度目の共演で初黒星となった。

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パワー再来のメモリアルアーチだった。大谷は同点の5回無死、左腕フリーランドの内角チェンジアップをフルスイング。ストライクゾーンからボール2個分外れた悪球に、詰まったような鈍い打球音が残った。それでも飛距離434フィート(約132メートル)で右翼フェンスを越えた。2年前、日本人初のホームランダービーで特大弾を連発し、オールスター史上初の二刀流でプレーしたクアーズフィールド。再び同地をどよめかせ、日米通算200号に到達した。

今春3月のWBC決勝で戦った相手との再戦でもあった。米国代表で中継ぎ登板し、大谷を2打数無安打に抑えていたフリーランド。本塁打にされたのは失投ではなく、「振りにいけばバットが折れるようなボール」。詰まらせる意図通りに投げた速球でも、侍が刀を抜くような素早いバットさばきで対応された。「この世代で1人しかいない才能の持ち主。信じられない打者」と同投手も脱帽。標高1600メートルの高地でボールが飛びやすいとされる“打者天国”の条件を差し引いても、驚異的なパワーがさく裂した一撃だった。

大谷はこの日、第4打席までで二塁打、本塁打、安打をマーク。8回の第5打席で元阪神のジョンソンと対戦し、空振り三振で今季5度目の「サイクル未遂」となった。流れを奪われたチームは8回裏に逆転され、痛い3連敗。日米通算200号の節目に大谷は「明日、日米通算201号を打てるように頑張ります」とコメントした。1週間前、メジャー通算150号を放った時と同様に、すぐさま次戦へと目を向けた。

前日には、7月11日にシアトルで開催されるオールスターのファン投票でリーグ最多得票となり、3年連続3度目の出場が決まった。初出場で超満員の観衆を魅了し、思い出深い地でもあるデンバー。この日はチケット完売の4万7085人が集まった。2年ぶりに訪れた一戦で、期待に応える節目の1発。まるで本拠地のような大歓声と拍手喝采で、温かく迎えられた。

◆日米通算200号 大谷が大リーグ通算152本目の本塁打。日本時代の48本と合わせ、区切りの200本目となった。日米でプレーした日本人野手のうち、200本塁打以上は12人目(日本404本、米国0本の中村紀洋を含む)。

◆日本人選手がクアーズフィールドで達成したメモリアル

▽唯一のノーノー 96年9月17日、米2年目のドジャース野茂英雄がロッキーズ戦に先発。試合前から雨が降り試合開始が2時間以上遅れた中、強力打線を110球で料理。現在でも同球場で唯一のノーヒットノーラン。

▽日本人WS初先発 07年10月27日、レッドソックス松坂大輔がワールドシリーズ(WS)第3戦でWS初先発。6回途中2失点で勝利を挙げた。WSでは松坂以外にダルビッシュが17年に2度先発しが、白星は松坂のみ。

▽3000本安打 16年8月7日、マーリンズのイチローが史上30人目のメジャー通算3000本安打。7回に右翼フェンス直撃の三塁打で歴史を刻んだ。

▽通算100勝 今年6月9日、パドレスのダルビッシュが6回途中4失点で5勝目を挙げ、メジャー通算100勝を達成。日本選手では通算123勝の野茂に次いで2人目。

◆クアーズフィールド ロッキーズの本拠地。海抜約1600メートルのデンバーに位置し、30球団で最も標高が高い。そのため打球の飛距離は他球場より約20フィート(約6メートル)伸び、「打者天国」として知られる。外野も広く、本塁打だけでなく二塁打や三塁打も出やすい。また酸素が薄いため投手はスタミナ切れを起こしやすく、低い気圧のため変化球の切れも悪い。

▼大谷が本塁打王争いでア・リーグ2位のジャッジ(ヤンキース)に6本差をつけた。21年の本塁打王争いは最大リードが5本差。6本リードは日本選手初。

▼大谷は6月だけで10本塁打、21打点。日本選手の月間2桁本塁打は07年7月の松井秀(13本)、21年6月の大谷(13本)に次いで3度目。1人で2度は大谷が初めて。今月はあと7試合あるが、日本人最多の13本に届くか。月間自己最多の23打点(21年6月)にもあと2打点とした。

▼ロッキーズ戦の本塁打は通算4本目だが、クアーズフィールドでは初。大リーグで本塁打を打った球場21球場目。