大乱調でメジャー生活が始まった。ドジャース山本由伸投手が「打たれたら困るので秘密」としていた初球は、真ん中やや低めの155キロ直球。1番ボガーツに捉えられ、左前打とされた。ノーワインドアップで投げられたのは、全43球でこの1球だけ。走者を背負っての投球が続いた。

メジャーにあって、日本にないルールが、ピッチクロックだ。走者がいる場合、18秒以内に投球モーションに入らないとボールとなる。昨年から2秒減らされた。ネット裏で黄色に浮かぶ電光掲示は、嫌でも目に入る。日本のように二塁や三塁に目線を送る間合いが取れない。3度までと制限のあるけん制も1度しかなかった。9秒を余してモーションに入るなど、投げ急いだ。

死球、三塁打、四球と続き、打者5人目の中犠飛で初のアウトを取った。三振を挟んで長短打を浴び、4安打2四死球2三振で5失点。最速は155キロが出たが、日本時代の先発118度で1度もなかった1回KOを食らった。

オープン戦は3試合で0勝1敗、防御率8・38だった。投手史上最高(投打二刀流の大谷を除く)の12年総額3億2500万ドル(約488億円)の契約で入団しただけに、米メディアは懐疑の目を向けた。それでも「成績は確かに悪かったんですけど、そこはオープン戦だと割り切ってます」ときっぱり言った。セットポジションで後方から変化球の握りが見えるとの指摘は受け入れたが、やり投げ、ハンドボール壁当てなど、独特の調整法は貫いた。

3年連続沢村賞を引っ提げて、ポスティングシステムで移籍した。「勝ち続けたい気持ちが強いところが、優先順位に置いていた」との理由でド軍を選んだ。大谷と同時に11年連続ポストシーズン進出の強豪に加わったが「大谷さんが仮に他のチームを選んだとしても、ドジャースを選んでいたかな」と勝利への貪欲さは人一倍だ。「いつも通り勝つことだけ考えて」と臨んだ初マウンドだったが、苦しい韓国での船出となった。【斎藤直樹】

【動画】メジャーデビュー戦の山本由伸まさかの初回5失点!4安打1死球と苦しい立ち上がり