【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)16日(日本時間17日)=斎藤庸裕、久保賢吾】ドジャース大谷翔平投手(29)が、子どもたちに夢舞台を用意した。

レッズ戦に「2番DH」で出場し2打数無安打。13日に失敗とされていた盗塁の記録が成功に変更され、4年連続2ケタ盗塁を達成すると、試合では今季11個目の盗塁をマークした。試合前には、心臓疾患と闘ってきた野球少年アルバート・リー君(13)の始球式で捕手役を担当。この日は大谷のボブルヘッド(首振り人形)デーで、当初は球団から真美子夫人の始球式を打診されたが、2人で相談して辞退したことを明かした。

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夢のようなひとときで、大谷が満面の笑みを見せた。試合前、リー君の始球式でグラブを構えて座った。ワンバウンドの投球をキャッチすると、大きな拍手と歓声が上がった。「できれば勝って(プレーする姿を)見せられれば良かったですけど、負けてしまったので。いい思い出にファーストピッチがなってくれればうれしい」。完敗で、勝利を届けることはできなかった。悔しいはずだが、試合後の表情は穏やかだった。

移籍後、大谷のボブルヘッドデーは初めて。選手の家族が始球式を行うことも多く、球団側から真美子夫人への打診があったという。「『奥さんどうですか』って言われてたんですけど、光栄なことですけど本人と話して、野球好きな子どもだったり、あんまり見に来られない病院の子だったり、そっちの方が良いんじゃないかなっていう感じで決めました」。2人の思い出よりも、病と闘い、野球を続ける子どもへ夢舞台をプレゼントすることを選んだ。

13歳のリー君は生後13日で心臓を手術。腹部を含めて計4度の手術を乗り越え、リトルリーグでプレーしている。大谷は始球式の前にサプライズでリー君と面会。ユニホームに筆を走らせながら、英語で「今日、来てくれてありがとう」と伝えた。「難しい状況の中で、好きで(野球を)やってくれたらそれだけでうれしいですし。ほんとに今日は、いい思い出になってくれたら、それで十分かなと思います」。子どもたちの喜ぶ顔を見るのは、何より心地よかったに違いない。

プレーする姿に夢を抱いてくれるなら、なおさらありがたい。「(夢を)与えるつもりはないというか、押し付けるものではないっていう。例えば元気が出た、頑張りたいなと思ったっていうのは、受け取った側がそう感じ取ってくれてるものではあると思うので。もちろん、そう思ってくれるのはうれしいことですし、一番は自分のやることをまずしっかりとやって、それで何か感じてくれたら、どんな人でもうれしいかなと思います」。まずは人それぞれの気持ちを大事に-。一貫した大谷の考えだ。

この日は、観客動員数で今季のメジャー最多となる5万3527人を記録した。「選手冥利(みょうり)に尽きるというか、本当に壮観で。プレーしてて素晴らしい瞬間だった」。無安打だったが、二盗を決め、スピーディーな姿を披露。スターたるゆえんは、豪快な本塁打だけではない。試合は完敗したが、超満員のスタジアムを盛り上げ、ハートと足で魅了した。