パドレスの右腕ランディ・バスケス(27)が「ドミニカ共和国のダルビッシュ」と呼ばれ、今季一皮むけた投球に注目が集まっている。
ダルビッシュ有投手(39)といえばWBCの侍ジャパンでは、後輩投手たちの良き相談役として指導力を発揮していたことが知られていた。その「先生」ぶりは所属球団でも発揮され、まな弟子第1号が大きく成長。その師弟関係を通し、ダルビッシュ流の先生ぶりをクローズアップした。
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バスケスとダルビッシュの出会いは、2024年にさかのぼる。23年12月にフアン・ソト外野手(現メッツ)ら大物選手を含む2対5の大型トレードでヤンキースからパドレスに移籍したバスケスは、移籍当初はコントロールに課題のあるまだ粗削りなルーキーだった。そのうちダルビッシュを師と仰ぐようになると、25年にはその師弟関係がより強固なものとなり、ダルビッシュが制限リスト入りしチームを離れている今季もその関係は続いている。
今季はここまで15試合に登板し、6勝5敗、防御率4・17。直球の平均球速は昨季より1・4マイル(約2・3キロ)増の94・9マイル(約153キロ)となり、空振り率は昨季メジャーワーストレベルの15・7%だったのが、今季は21・8%に向上した。かつてはほとんど投げなかったスライダーを5・5%まで増やし、7球種を自在に操る。その投球は「まるでダルビッシュのクローン」と評され、「ドミニカ共和国のダルビッシュ」や「バスビッシュ」とも呼ばれている。2人の配球(図)を比較しても、それは一目瞭然。ダルビッシュはここ数年は変化球の割合がかなり高くなっているが、直球の球速が今よりあった18年頃の配球は、うりふたつといっていい。
バスケスの今季の成長は、昨オフに取り組んだことが実を結んだためだという。クレイグ・スタメン監督は開幕の頃「ランディはオフの間、毎朝6時に起きてトレーニングをしていた。そしてそれが終わるまでに必ず、ダルビッシュに電話をかけていたそうだ」と、二人三脚の取り組みに言及していた。球速を上げるために肉体を改造し、トレーニングメニューも改善。バスケスは「おかげで、自分の球に自信を持てるようになった。投げるときの感覚がよくつかめるようになって、それが結果に出ている」と話していた。
レベルアップするために、ダルビッシュからは多くのことを学んでいる。投球のことだけでなく、登板間の調整の仕方や登板前の準備の仕方から、データを活用してどう生かすかということまで、ありとあらゆることだ。自分が持てるすべてを惜しみなく与えているダルビッシュの指導スタイルは、唯一無二といえるかもしれない。
その師弟関係は周囲にも知られており、今季はバスケスが好投するたびに、現地メディアではダルビッシュの功績だとたたえられている。バスケス自身も「彼は信じられないほどすごい人。本当に多くのサポートをしてもらっている。僕にとって特別な存在。メッセージやビデオ通話アプリや電話で常に連絡を取り合っている」と明かし「僕の野球キャリアに興味をもってくれて、たくさんのことを教えてくれて、感謝しかない。これからも、僕の野球人生をより良い方向に導いて、力を貸してくれたらと願っている」と師匠をたたえた。相手が求めてくれば、とことん付き合うのがダルビッシュ。固い絆で結ばれた師弟の、今後の歩みに注目したい。
◆ランディ・バスケス 98年11月3日、ドミニカ共和国生まれ。国際アマチュアFA選手として19歳でヤンキースに入団。23年5月26日にメジャーに初昇格し、パドレス戦で先発としてデビューした。同年12月6日にフアン・ソト外野手を含む2対5の大型トレードでマイケル・キング投手らとともに移籍。直球、カットボール、シンカー、カーブなど7球種を持ち、直球の今季球速は最速97・8マイル(約157キロ)をマークしている。183センチ、74キロ。右投げ右打ち。
【記者の目】ダルビッシュはおそらく押し付けるような指導はしない。かつて子育ての話になった際、子供たちとの接し方について自らの姿勢を明かした。「あれこれ言わないです。どこの高校、大学とか、ここにしろ、みたいなことは言わないですね。テストがどうとか、一切タッチしないです」。ただ、放任主義ではない。「ちゃんと準備する。手を抜くな」と手を差し伸べるのが、スタイルなのだろう。
ダルビッシュ自身、プロ入り後、周囲の批判をよそに、独自のトレーニング、サプリメントなどを採り入れてきた。体の仕組み、栄養など多岐にわたる知識や情報を独学で身に付け、体力、技術向上に生かしてきた。「良くも悪くも自分でやってきた。自分が過去とどう違うのか。なぜなのか。では、どうやって改善するのか」。基本は自問自答。ただ、周囲の意見にも謙虚に耳を傾ける。だからこそ、自らも聞かれれば答え、押し付けるることはしない。ダルビッシュの助言が、日本人以外にも伝わるのは、相手により強くなってほしいと寄り添う「サポート精神」に起因するのではないだろうか。【MLB担当=四竈衛】



