【2000年11月20日付・日刊スポーツ紙面】

 メジャーリーガー、ICHIROが誕生した。19日、オリックス・イチロー外野手(27)のシアトル・マリナーズ入団会見が、マ軍の筆頭オーナー、山内氏(73)が社長を務める京都市内の任天堂新本社で行われた。3年契約で総額18億円、登録名「ICHIRO」、背番号「51」。3年契約はマ軍側が提示した6年の長期契約を蹴り、イチローが望んだもので、すぐに結果を出す、という7年連続首位打者の自信の表れだった。28日にも渡米し、マ軍の身体検査を受ける。日本人大リーガーは11人目で、野手は初。

 少年のような目だった。「じゃーん!」。ユニホームにそでを通すと、イチローは声を上げクルリと1回転し披露した。背中にはオリックス時代と同じICHIROと51が輝いていた。弓子夫人とともに2時間以上も前に会見場に入っていた。会見では珍しく言葉に詰まった。「マリナーズの一員でプレーできることを非常に光栄に思っていますし……、光栄に思っていますし……、光栄に思っています」。スポットライトには慣れっこのはずが、やはり緊張していた。だがユニホームにそでを通すと胸を張った。

 前日18日、3日20時間に及んだ交渉で契約合意に達した。3年契約で、契約金も含め総額18億円(初年度年俸4億円+出来高1億円)。6年の長期契約を望むマリナーズ、4年契約を描いていた代理人アタナシオ氏の双方に3年契約を迫ったのはイチローだった。「まず3年頑張ってみて、それからまた考えたかった」と言う。だが不安が原因ではない。長期契約拒否は3年間で確かな結果を残し、再交渉で大型再契約を勝ち取る自信の裏返しでもあった。

 周囲には1年目からの活躍に疑問符を付ける声もあるが、約140人の報道陣が詰めかけた入団会見で言った。「だれより自分が期待している。自信がなければ、この場にいない。重圧がかかる選手であることは誇り」。マ軍首脳から「1番右翼」を確約されても、興奮はない。レギュラーは奪うものと分かっている。登録名も「ICHIRO」となった。大リーグでファーストネームでの登録は極めて異例。「イチローでありたいという気持ちと、これで慣れ親しんでもらったという思いがある」とこれも、イチローの希望が通ったものだった。

 28日に渡米し、チームのメディカルチェック(身体検査)を受けた後に正式に契約書にサインする。マ軍は独占交渉権を得るためのオリックス球団に支払う移籍金14億円を加え、トータルで約32億円の巨費を投じた。あとはイチローが結果を出すだけ。「イチローさん、ユミコさん。マリナーズファミリーにようこそ」。マ軍リンカーン最高経営責任者の言葉にイチローは口元を引き締めた。【町田達彦】