<ドジャース5-2レッズ>◇21日(日本時間22日)◇ドジャースタジアム

 【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)21日(日本時間22日)=四竈衛】日本人メジャー2投手による史上初の「先発勝利&セーブ」が、ついに実現した。レッズ戦に先発したドジャース黒田博樹投手(33)が、8回99球を投げ5安打2失点。デビュー戦で勝って以来、8試合白星に恵まれなかったが、47日ぶりで今季2勝目(3敗)を挙げた。9回は斎藤隆投手(38)が無安打1三振と完ぺきに抑え、8セーブ目を挙げた。黒田が長いトンネルを抜け、ドジャースは3連勝で首位ダイヤモンドバックスとの差を3ゲームに縮めた。

 苦しみの分だけ、解放感も大きかった。47日ぶりとなる白星を手にした黒田は、にこやかな表情で率直な思いを口にした。「細かいことを言ったらキリがないですが、チームも勝って、自分にも勝ちが付いて良かったです」。しかも、抑えの斎藤へ直接つなぎ、日本人初の「先発勝利&セーブ」を達成、長いトンネルを抜けた。

 最速は153キロ。ただ、球が走っていても、黒田に勝てる感覚はなかった。試合前から、ロサンゼルスでは珍しく突風が吹き荒れ、上空を雨雲が覆った。2回表には、5番の左打者ダンの止めたバットの打球が三塁へ転がった。しかし、引っ張りの打球に備えて全体が右寄りの守備シフトを敷いていたため、“三塁ゴロ”はそのまま転がって左翼へ抜けて、二塁打。それを機に、先制点を奪われた。不運な流れは、確かに潜んでいた。「勝てなかったので自分のリズムが分からなかったし、精神的にも焦ってた部分がありました」。勝てるはずの感覚すら、薄れさせていたのだ。

 この日は、初めて自宅から球場までの道順を変えた。その一方で、自分の足元を見失うことはなかった。「(気持ちを)切り替えられなかった。ただ、ジタバタしても悪い方向へ行ってしまいますから」。3敗目を喫した前回登板(16日)後、斎藤と食事に出かけても終始ジョークを連発。道順は変えても、練習メニューや前向きな姿勢を変えることはなかった。メジャーでは自己最長となる8回を投げ、斎藤に直接託した。

 斎藤は、黒田とのリレーには格別の思いと重圧を感じていた。4月14、25日の2試合で救援に失敗し、黒田の白星を消したことは、頭から消えなかった。「いつも意識しないようにしてるつもりですが、やっぱりブルペンでクロ(黒田)の投球は見てますから」。春季キャンプ以来、右ふくらはぎ痛の影響もあり、投球フォームは万全ではない。だが、踏み出す左足のステップ幅を約15センチ狭めるなど工夫を凝らし、3連投となったこの日も速球は最速153キロをマーク。3番グリフィーからの主力3人をわずか13球で仕留めた。

 2人だけでつないだ「史上初」の記念ボールは、サインを記入した上で先輩の斎藤が保管することになった。斎藤が「シーズンが終わってゆっくりかみしめたい」と言えば、一方の黒田は「野球人生が終わった時に記念になると思う」と、心にしまった。2人とも苦しんだ末の「先発勝利&セーブ」。心の中のモヤモヤも、ロス上空の雨雲も、試合後にはすっかり消え去っていた。