ロッテ、阪神、米大リーグのヤンキースなどで活躍した元プロ野球投手の伊良部秀輝容疑者(39)が20日午前5時すぎ、大阪市北区のバーで、男性店長(22)に暴行し、大阪府警曽根崎署に暴行の現行犯で逮捕された。同容疑者はカードの支払いをめぐり店側とトラブルになり、洋酒のボトルを投げ付けるなど、大暴れ。かつてのタイガースの投手が大トラに変身。この日夕まで約10時間、曽根崎署の取り調べを受け、釈放された。同署は捜査を継続、書類送検する方針。

 剛球を誇った元プロ野球投手が、いすを蹴り、洋酒のボトルを投げ付け、止めに入った男性店長の髪の毛や胸ぐらをつかみ、壁に押しつける-。大トラへと変ぼうした伊良部容疑者は、この日未明、暴行の現行犯で曽根崎署に逮捕された。

 調べでは、同容疑者が暴れたのは、大阪市北区堂山町のバー「バタフライ」で、キタ繁華街の商店街にある雑居ビル3階。同容疑者は午前3時ごろ、高校の同級生だった男性と2人で来店し、生ビールを中ジョッキ20杯ほど飲んだ。支払いの際、「ブラックカード」と呼ばれる最上級のクレジットカードを提示したが、同店ではこのカードを扱っておらず、支払いを断られた。すると、これに腹を立てた同容疑者が暴れ始めたという。同署によると、代金は3万8400円で、同容疑者は別のカードで支払いを済ませた。

 午前5時すぎ、女性従業員が、近くを通り掛かった警察官に通報。同容疑者は、駆け付けた警察官には素直に応じたという。その後、同署で10時間以上に及ぶ取り調べを受け「酒を飲んで暴れ、店のグラスなどを壊したのは間違いない」と供述した。

 この日午後5時前になって同容疑者は、逃亡の恐れがないとして即日釈放された。無精ひげも目立ち、視線も伏せがちで、集まっていた報道陣に「せっかくみんなで楽しく飲んでいたのに、ちょっとした手違いで、力が入ってしまった。申し訳なかった」とコメント。幸い、暴行した店長にけがはなかったものの、店側への謝罪について問われると、同容疑者は「まあまあ、ちょっと…」と言葉を濁し、迎えのシルバーの外車に乗り込んだ。

 バーの男性店員(26)は「最初はサインしていたり、すごくいい人だった。支払いのとき、いきなり激高して店長が2発殴られ、店内もかなり壊れた。好きな選手だったけど、殴ったことは謝ってほしい」と話している。

 同容疑者は04年に阪神退団後、再び米国に渡り、カリフォルニア州に夫妻で居住。ロサンゼルスで、高校時代の友人の援助を受け、うどん店を開店した。当初は人気店だったが、友人とトラブルになり、その後は、徐々に客足が遠のき、今年春以降に閉店していた。

 ビジネスでは成功を収めることができず、最近、単身日本へ。7月には、CS放送で千葉ロッテ-オリックス戦の解説者として出演し、久々に日本ファンの前に登場。日本での再出発へ動きだしたばかりだった。この日、同容疑者が逮捕された店前には、ニュースで事件を知った数人のファンが通り掛かり、携帯電話で店先を写真撮影する姿も見受けられた。