史上最高入札額が「恋人」への誠意の表れだった。大リーグ機構は19日(日本時間20日)、レンジャーズがポスティングシステム(入札制度)で日本ハム・ダルビッシュ有投手(25)と30日間の独占交渉権を獲得したと発表した。落札額は約5170万ドル(約38億7800万円)。リーグ連覇も初の世界一を逃し続けており、今オフ補強の切り札として、06年松坂大輔投手(レッドソックス)の5111万1111ドル(当時のレートで約60億円)を上回る大金を投じた。交渉期間は米東部時間1月18日午後5時(日本時間同19日午前7時)までとなっている。

 密着マークを続けた本命の執念が実った。日付も変わろうとする直前、地元テキサスに大ニュースが飛び込んだ。レンジャーズのジョン・ダニエルズGM(34)は交渉権落札から1時間後、深夜の電話インタビューに応じ、「球団、ファン、そして地元にとってエキサイティングな夜だ。ここまでの道のりは長かった」。レ軍の将来を託すダルビッシュ獲得が現実味を帯び、現役最年少GMは興奮を隠さなかった。

 ふたを開けたら、まさかの逆転劇に沸いた。米主要メディアの間では発表直前までブルージェイズの「勝利」が伝えられており、レ軍球団内でもあきらめムードがあった。ただ恥ずかしくない条件で入札した手応えもあった。06年の「松坂超え」に踏み切り、約60万ドル(約4500万円)の上積みが、勝負の分かれ目となった可能性がある。

 入札金だけで今季総年俸約9230万ドルの半分を超え、これにダルビッシュ本人への大型契約が必要になる。相場は5年7500万ドルとも伝わり、日本人投手では史上最高契約が確実視される。それでも同GMは「ここ数年彼を見続けて、能力と投球は非常に印象深かった。わが投手陣にとって最高の補強になると信じる」と投資は惜しくないとした。FAでエースのウィルソンを同地区のエンゼルスに奪われており、しかも現役最強の呼び声高い大砲プホルス(前カージナルス)まで加入した。最大のライバルに後れを取っていた同GMは、「交渉はこれからだが、非常に大きな1歩。彼と契約できれば、うれしい悲鳴ともいえる」と声を弾ませた。

 ダルビッシュには早くも背番号11を用意。現在、マイナーから昇格した元阪神のクールボー打撃コーチが付けており、譲渡に支障はない。また同地区にはイチロー、同じマリナーズ入りが伝わる川崎(ソフトバンクFA)、松井もアスレチックスにFA残留する可能性があり、日本人対決も話題を呼びそう。リーグ3連覇、そして来季こそ悲願の世界一へ、日本球界のエースが道を切り開く。