<ブルワーズ3-4ロッキーズ>◇20日(日本時間21日)◇ミラーパーク

 ブルワーズ青木宣親外野手(30)が、メジャー1号のランニング本塁打で本拠地初スタメンを飾った。地元ミルウォーキーでのロッキーズ戦に「2番中堅」で起用され、4回1死からのチーム初安打がランニング弾。左前打が転々とする間にダイヤモンドを駆け抜けて、ブ軍史上26本目の快挙を手にした。6回には同点劇をもたらす中堅二塁打と続き、初のマルチ安打もマーク。不振の正中堅手に代わり、レギュラー奪取を大きくアピールした。

 湧き起こるカーテンコールが心地よかった。なじみの薄かった「Aoki」の名前を、一振りで地元ファンの脳裏に刻み込んだ。青木は4回1死、ここまで1人の走者も許さなかったロ軍右腕チャシーンの外角低めに沈むツーシームをとらえた。

 「ラッキーだった」という鋭いライナーがスライス気味に左翼線へと向かい、ダイビングを試みた左翼手ゴンザレスのグラブも届かず、フェンス際まで転々とする間に加速。「ちょっと息が切れました」。1周360フィート(約110メートル)を15秒5で疾走し、本塁手前でスピードを緩めながら、最後はスタンディングでホームを踏む余裕があった。

 メジャー1号がランニング本塁打。200本に1本しか生まれないという珍しい本塁打は、ヤクルト時代を通じても初めてだった。日本選手では元メッツ松井(現楽天)が6年前の同じ4月20日に記録して以来で、俊足イチローも公式戦では縁がない。ブ軍43年の歴史でも26本目。球場アナウンスが「飛距離は213フィート(約65メートル)」と告げると、スタンドはどっと沸いた。

 この試合にかける思いは強かった。開幕14試合目で2度目の先発は、同7試合目で初めて巡ってきた本拠地初スタメン。しかも慣れた中堅の定位置に就き、アピールの機会をうかがっていた。2点を追う6回も1死から中二塁打でつなぎ、続くハートの左前打で一気に生還。ガメルにも同点打が飛び出し、再び追いつく起点になった。青木は「興奮したけど、いい形で入れた。すごく気持ち良かった」と振り返った。

 チーム内には青木待望論が高まっている。代打起用が主だが、凡打も内野安打にする気迫の走塁に加え、17日のドジャース戦ではスクイズも決めた。本来ならデーゲーム明けのナイターは主力が出場するものだが、この日は打率1割3分5厘と不振の正中堅手モーガンが右投手で今季初めて先発を外れた。レネキー監督は地元紙ミルウォーキー・センティネル電子版で「ノリの働きには満足している。彼はもっと出場機会を求めているし、時期が来たらわれわれも考える」と、レギュラー再考の可能性を否定しなかった。

 試合は9回に勝ち越されて惜敗。昨季の地区V球団が借金2と出遅れ、青木も「僕の打撃が勝ちにつながればよりうれしかったけど」と素直に喜べなかった。それでも画面ではランニング本塁打のシーンが何度も繰り返され、思い出深い1日に表情には充実感がにじんでいた。<日本人選手のランニング弾>

 ◆松井稼頭央(メッツ)

 06年4月20日パドレス戦(ペトコパーク)の3回無死、右翼フェンス直撃の当たりで一気に生還。右ひざ痛で出遅れ、これがシーズン初打席。04年から3年連続でシーズン初打席本塁打となった。「ベース1周がこんなに長いなんて。酸欠で5回ぐらいまでフラフラでした」。

 ◆イチロー(マリナーズ)

 07年7月10日オールスター戦(AT&Tパーク)の5回1死一塁で、打球は右翼フェンスに張り付けられた垂れ幕を直撃。右翼グリフィーがクッションボールの処理を手間取る間に本塁を駆け抜けた。球宴史上初のランニング本塁打で日本人初のMVP。