【シカゴ(米イリノイ州)5日(日本時間6日)=高山通史】レンジャーズ・ダルビッシュ有投手(25)がドタバタ劇の末、1年目でのオールスター戦(10日・カンザスシティー)の出場切符を手にした。両リーグ5人の候補の中から「最後の1人」を選ぶインターネット投票が締め切られ、約730万票を獲得してア・リーグのトップとなって初選出された。1日に最終投票が始まり、2度の中間発表でトップを維持したが、猛追を受けて舞台裏は一時、騒然。ダルビッシュらは直前まで「ツイッター」を駆使するなどして集票し、晴れの舞台を射止めた。

 少しだけ殺気立っていた空気が、ほんわかした。激戦を制してダルビッシュの「当選」が決定。敵地でホワイトソックスに惜敗したレ軍のクラブハウスが、お祝いムードに包まれた。ちょうど対戦相手のベンチにいたピービをかわし「最後の1人」に選ばれた。「投票なので投票していただいた方に、すごく感謝して楽しみたいなと思います」。ダルビッシュも肩の荷を下ろし、穏やかにかみしめた。

 投票締め切りの約4時間前。舞台裏はてんやわんやだった。2度の中間発表からトップだったが、状況は最終局面で一変。07年サイ・ヤング賞など実績、人気十分のピービが急激に巻き返しているとの情報がレ軍側に入った。ちょうど本人らの「ツイッター」での投票が可能になると、チーム一丸で猛攻に出た。

 けん引したのはダルビッシュ。フォロワー約68万人のツイッターに「この#VoteYuをリツイートして貰えると投票になります!

 あと4時間です!」(原文まま)とコメント。捕手のナポリ、内野手のスナイダーら同僚が同様に援護射撃した。ツイッターで日本語で呼びかけたナポリは「オレの携帯を奪って『日本のファンに呼びかけるから』とダルビッシュが入力したんだ」。すでに球宴に選出されている守護神ネーサンは家族全員に協力を促した。

 締め切り時間は日本の早朝(午前5時)で、ピービの大票田の本拠地シカゴは日中。激しい気性で知られるレ軍ブレーク広報部長は「日本は今、何時だ?

 みんなたたき起こせ」と、いらだつほどだった。2位以下の投票数は発表されなかったが、予断を許さない攻防だった模様。謙虚な姿勢を貫いてきたダルビッシュは「僕自身はピービに投票した」と思わずジョークを口にするほどホッとした様子だった。

 圧倒的な存在感だった日本とは置かれた立場が違うことを再認識させられ、出場権を手にした。「どういう空気でやるのか分からない。真っすぐばかりなのか、普通に変化球をどう使っていいのか。周りの投手を見ながら、打たれないようにしたい」。舞台は日本ハム1年目からの恩師ヒルマン前監督(現ドジャース・ベンチコーチ)が2年前まで指揮したロイヤルズの本拠地カンザスシティー。約730万票の思いを右腕に乗せ、祭典へ挑む。

 ◆日本人のMLBオールスター選出メモ

 2年ぶり9人目の選出で、新人では08年福留(カブス)以来6人目。投手では07年の斎藤(ドジャース)岡島(レッドソックス)以来5年ぶり6人目の選出だが、先発投手に限れば日本人で初めて球宴に出場した95年野茂(ドジャース)以来。