<レンジャーズ9-3マリナーズ>◇14日(日本時間15日)◇レンジャーズボールパーク

 レンジャーズ・ダルビッシュ有投手(26)が、世界一の野望へ加速した。マリナーズ戦に先発し、日本時代のライバル岩隈久志投手(31)と緊迫した投げ合いを展開。7回2安打1失点と完璧な内容で15勝目を挙げた。日本人投手の新人では07年のレッドソックス松坂と並ぶ最多勝利数となり、9三振でシーズン200奪三振も超えた。停滞期もあったルーキーイヤーの終盤で本領発揮し、悲願の世界一へトップギアに入った。

 別人のダルビッシュがマウンドにいた。マ軍とは過去3度の対戦で1勝2敗、防御率9・00と相性は最悪。デビュー戦で8安打5失点と打ち込まれて以来すっかりカモにされた感じがあったが、この日は違った。

 「真っすぐがあまり走らなかった」という中でも、カットボールを軸に効果的な投球を展開。中盤からは捕手ソトと相談し、カーブを決め球としながら、ストライクゾーンを大胆に攻めた。連続出塁を許したのは、1失点した4回のみ。安打や四球に動じることなく、試合前から小雨がそぼ降るあいにくの天候の中、敢然と狙い通りにボールを投げ続けた。

 改良中だった投球フォームが固まり、飛躍的に制球がよくなった。最近3試合では7回以上を投げながら被安打数は3、与四球数は2以下とあり「前半戦と全然違う、自分の思い通りのことができている」と手応えをつかんでいる。

 ダルビッシュ

 相手を見て、しっかり投げられている。いつでもストライクを取れる感じはあるので、すごく楽に勝負はできていると思いますね。

 この日は日本時代に好敵手だったマ軍岩隈と、日米通算7度目の投げ合いだった。だが、岩隈が「対彼(ダルビッシュ)を意識しながら投げられた」と話す一方、ダルビッシュは「あまり向こう(岩隈)の投球は見ていない」と感情は一切介入させず。勝利につながる投球だけに専念し、3季連続地区優勝を狙うチームを白星へと導いた。

 この日は5回に先頭ペゲロから空振り三振を奪い、今季200奪三振を達成。日本人投手の1年目としては松坂に並ぶ15勝目を挙げるなど、記録ずくめの夜となったが、そこには何の感情も湧かない。目指すべきゴールは記録の樹立ではなく世界一。レギュラーシーズンは残り18試合。その目標へ向け、高精度の投球でチームをけん引する。【高山通史、佐藤直子通信員】

 ▼ダルビッシュが15勝目を挙げ、奪三振は200を超えた。日本人大リーガーの1年目の15勝は07年松坂(レッドソックス)に並ぶ最多タイ。1年目の200奪三振は95年野茂(ドジャース)と松坂に次いで3人目。今季は残り3試合が予想されるが、日本人最多の18勝(08年松坂)236三振(95年野茂)に迫るか。

 ▼日本人同士の先発対決は通算8度目。ダルビッシュは4月24日の黒田との投げ合いに次いで2連勝。松坂を含め日本人投手の同日3人先発は8日以来で通算9度目。