<ヤンキース5-1レッドソックス>◇3日(日本時間4日)◇ヤンキースタジアム

 【ニューヨーク=四竈衛、水次祥子】ヤンキース黒田博樹投手(39)が、自らが持つメジャー日本選手の連続2ケタ勝利を5年連続に伸ばした。レッドソックス戦に先発し、7回を4安打1失点8奪三振と好投し、10勝目(8敗)を挙げた。今季はヤ軍でただ1人、開幕から先発ローテーションを守り続けており、日米通算3000投球回の偉業にもあと5回2/3と迫った。

 「日本人初」の大記録にも、ヤンキース黒田はうっすらと笑みを浮かべるだけだった。日米通算プロ18年目の右腕がメジャーで、野茂も届かなかった5年連続2ケタ勝利を刻んだ。「継続するのは大事なことで、この年齢でもこっちでできるのは誇りに思える。でも、日本からいい投手がたくさん来ているので、すぐに超えられるでしょう」。はしゃぐわけでも、照れるわけでもない。サラリと本音を言うのが、ベテランらしかった。

 円熟味と若さをミックスした投球だった。レッドソックスとは、通算14試合目の対戦。シンカー、スプリットのイメージを利用し、随所に若々しいフォーシーム(直球)をちりばめた。2回から3回にかけて4者連続三振。うち3人が3球三振だった。「いろんな球種でストライクが取れたのが良かった」と振り返ったように、全95球中73球がストライク(77%)。冷静な頭脳と、最速93マイル(約150キロ)の力強さで、連打も四球も許さなかった。

 33歳で渡米し、35歳から5年連続で10勝を挙げてきた裏には、準備と工夫、向上心の積み重ねがあった。走り込みを欠かさず、本拠地クラブハウスで湯船につかるなど疲労回復にも努める。最近の登板間はブルペン入りせず、キャッチボールや遠投に強弱を付けて調整した。年齢による衰えを指摘する声に対し、結果で異議を唱えようとする姿勢は、同僚イチローと変わらない。「イチローさんの日々の過ごし方、準備の仕方を見てると、僕自身もまだまだやらないといけないと思います」。

 開幕前、今季の目標の1つに掲げたのが、日米通算3000投球回。両球界の経験者では野茂しか達成しておらず、大卒としては至難の大台へ次戦にも到達する。その一方で、9月に息切れした昨季の反省は忘れていない。「あの時期に貢献できなかった悔しさは、今でも持っています。それが今の支えになっている」。記録継続の裏には、同じ失敗を繰り返さないための地道な姿勢があった。

 ▼黒田が5年連続2ケタ勝利を挙げ、自らが持つ日本人投手の連続2ケタ勝利の最長記録を更新した。2位は野茂が2度、ダルビッシュが1度記録した3年連続。5度目の2ケタ勝利は野茂(7度)に次いで多い。今季は田中も12勝を挙げており、同一球団の日本人10勝コンビは02年ドジャースの野茂16勝、石井14勝以来、12年ぶり2度目。

 ▼今季の日本人投手は岩隈13勝、田中12勝、ダルビッシュ、黒田が各10勝。日本人投手の2ケタ勝利4人は99、02、13年の3人を上回る史上最多。