<ア・ワイルドカードゲーム:ロイヤルズ9-8アスレチックス>◇9月30日(日本時間10月1日)◇カウフマンスタジアム

 ロイヤルズ青木宣親外野手(32)の同点犠飛が、地区シリーズ進出を呼び込んだ。ア・リーグのワイルドカードゲームが行われ、試合は逆転に次ぐ逆転のシーソーゲーム。ロ軍は6回に4点を追う展開になったが、9回に青木が同点犠飛を放ち、延長12回にはペレスのサヨナラ打で進出を決めた。2日(日本時間3日)から敵地アナハイムでエンゼルス(西地区1位)と5回戦勝負に臨む。

 延長12回、ペレスのサヨナラ打が飛び出した瞬間だった。青木がナインとベンチを飛び出す。二塁ベース後方にいたペレスを追いかけ、笑顔で頭をたたく。苦しみ、つかんだ地区シリーズ進出の喜びを爆発させた。

 青木

 自分の野球人生でもここまでもつれ込むような試合ってなかった。最後、取られても取り返して、取られても取り返してって、ホントにすごい試合だったと思います。

 青木が死闘を演出した。1点を追う9回1死二塁。一打同点、1発逆転の打席だった。ア軍守護神ドゥーリトルをにらむ。カウント2-1からの4球目に二塁走者ダイソンが三盗。1死三塁と好機が広がった直後の5球目だった。時速93マイル(約150キロ)の内角速球を思い切り振り抜く。大きな弧を描きながら右翼へ飛んだ打球はサヨナラ弾には届かない。フェンス約5メートル手前で背走した右翼手が捕球。犠飛でダイソンが生還すると球場が揺れた。

 青木

 ある程度、長打を狙っていたんですけどね。しっかり目を切らさずに、最後まで確かめながら、それくらいボールをよく見て打っていました。

 ベンチへ戻ると仲間の手荒い祝福が待っていた。もみくちゃになりながら、はみ出さんばかりの笑顔。6回には3-7と4点差をつけられ、延長12回には先に勝ち越された。だが10回の守備から交代した青木は、ベンチで声を出し続けた。思いは届いた。

 プレーオフ進出を決めた試合以来、2度目のシャンパンファイトでずぶぬれになった。体からは試合の興奮と余韻が抜けず、言葉にできない感慨があふれた。

 青木

 このチームでまだ野球ができると思うと本当にうれしい。この雰囲気の中で野球がやりたかった。野球選手でよかったなって思いにさせられました。

 明日3日からは今季両リーグ最多勝率を誇るエンゼルスと対決する。まずは1歩前進。世界一を目指す旅は続く。【カンザスシティー(米ミズーリ州)=佐藤直子通信員】

 ▼青木が同点犠飛。日本人野手のポストシーズン出場は通算9人目だが、デビュー戦で打点を挙げたのは08年の岩村(レイズ)以来2人目。初出場で先制、同点、勝ち越し、逆転の肩書付き打点を挙げたのは青木が初めてとなった。

 ◆延長12回

 ポストシーズンで勝ち抜きのかかった試合史上、最長タイで2度目。24年のセネタース(現ツインズ)対ジャイアンツのワールドシリーズ第7戦以来。

 ◆プレーオフ最多タイ盗塁

 1回の青木の盗塁から始まったロイヤルズの計7盗塁は、プレーオフの1試合最多タイ記録。1907年ワールドシリーズ第1戦のカブスと、75年ナ・リーグ優勝決定シリーズ第2戦のレッズに並んだ。

 ◆1イニング最多盗塁

 8回のロ軍のが成功させた1イニング4盗塁は、ポストシーズン史上初。