<ア・リーグ優勝決定シリーズ:ロイヤルズ2-1オリオールズ>◇第4戦◇15日(日本時間16日)◇カウフマンスタジアム

 【カンザスシティー(米ミズーリ州)=四竈衛】ロイヤルズ青木宣親外野手(32)が、世界一への挑戦権を獲得した。ア・リーグ優勝決定シリーズで王手をかけていたロイヤルズが、オリオールズに競り勝ち、4連勝で85年以来29年ぶりのワールドシリーズ(WS)進出を決めた。今ポストシーズン(PS)は、メジャー新記録となる無傷の8連勝。21日(同22日)に始まるWSでは、「ジャイアンツ-カージナルス」の勝者と対決する。

 この1年、胸の中に鬱屈(うっくつ)した思いをはき出すかのようだった。クラブハウス内でシャンパンファイトを終えた青木は、クラブハウスを飛び出すと、一塁側ベンチ上に駆け上がった。居残って歓声を送り続けるファンとハイタッチを繰り返し、さらに外野をウイニングラン。「これでやっとワールドシリーズの舞台に立てます」。過去29年間、本拠地カンザスシティーで待ち続けてくれた熱狂的なファンに対する感謝の思いと、自らの葛藤を重ねた。

 青木がホームを踏めば負けない。今ポストシーズンで定着した流れは、この日も不変だった。1回裏無死一塁で迎えた第1打席。初球が右太ももを直撃した。苦痛で顔をしかめたが、その後の犠打と内野ゴロ、敵失で2点目のホームイン。終わってみれば、その1点が貴重な決勝点となった。

 昨オフ、電撃的なトレードでロ軍入りが決まった。伝え聞いたのは、帰国していた当時、東京でのイベント参加直前。急な報にも青木は前向きだった。「プレーオフを狙えるチームに必要とされたわけですから」。古巣ブルワーズへの愛着があっても、請われて移籍することに違和感はなかった。

 ただ、その当時、WSにまで手が届く光景はイメージしていなかった。「上を狙えるチームだと分かってはいても、ここまで来るとは想像できなかった。ただ、結束力も出た。なかなかここまで来られないと思うし、本当にいい感じできていると思います」。若いチームが、試合を重ねるたびに着実に成長する過程が、青木にとっても、過去、経験にないほど貴重な財産だった。

 PSでは、新記録となる8連勝。コツコツと積み重ねる丹念さも大事だが、今は自軍の流れに身を任せるのも悪くない。「こんなことはなかなかない。この感じで、もう4連勝で取るぐらいの気持ちで行きたいですね」。猛烈な勢いで勝ち進む一方で、淡々と話す青木の口調は、冷静で自信に満ちていた。<ロイヤルズ記録メモ>

 ◆史上初の無傷8連勝

 ポストシーズン(PS)初戦からの8連勝はメジャー単独最長。前日まで7連勝で76年レッズ、07年ロッキーズに並んでいた。

 ◆年またぎでは11連勝

 前回PSに出場した85年を含めると11連勝。ヤンキースが2度記録している12連勝に次ぐ。

 ◆WCゲームからは初優勝

 ワイルドカード(WC)ゲームが導入された12年以降、WCゲームからワールドシリーズ(WS)に進出したチームは初めて。

 ◆7チーム目のスイープ突破

 7回戦制が導入された85年以降、4連勝でリーグ優勝決定シリーズを制したのは7チーム目。ア・リーグでは5チーム目。

 ◆接戦に強い

 4試合の総得点はロ軍が18点、オ軍が12点で6点差。これはPS史上、4試合全勝の場合の最小差タイ。50年WSのヤンキース、05年WSのホワイトソックスに並んだ。