<ワールドシリーズ:ロイヤルズ10-0ジャイアンツ>◇28日(日本時間29日)◇第6戦◇カウフマンスタジアム

 ロイヤルズが29年ぶり2度目の頂点に逆王手をかけた。ワールドシリーズ(WS)第6戦で、ロイヤルズがジャイアンツに圧勝し、3勝3敗のタイに持ち込んだ。「2番右翼」で4試合ぶりに先発復帰したロ軍青木宣親外野手(32)は、WS10打席目で初安打となる適時打を放つなど、ようやく本領を発揮。第7戦で自身初の世界一リングに挑む。

 一塁側ベンチへ、そしてスタンドの家族へ向かって、青木は一瞬だけ右手をあげた。2回裏、1点を先制し、なおも1死満塁。ジ軍先発ピービに2球で追い込まれながらもファウルで粘った末の7球目だった。146キロのツーシームを捉えた打球は、狭い三遊間だけでなく、胸にくすぶっていたモヤモヤをも、突き破った。1回は内角球に空振り三振。「正直、自分の安打というより、あの場面で打てたのがうれしかったです」と安堵(あんど)した。青木のWS初安打初打点で勢いが増した打線は、この回打者一巡の猛攻で7得点。試合の大勢を決めた。

 第2戦まで無安打に終わり、DH制のない敵地3連戦では先発から外れた。第4戦では、代打で起用されながら併殺打。それでも「悔しかったけど、優勝することが一番ですから」と下を向くことはなかった。試合後、サンフランシスコの宿舎では、スイングを繰り返した。専属トレーナーの原田雅章氏と一緒に、バット軌道や体の使い方をチェック。軸足への体重のかけ方と腰の回転、フォロースルーの大きさなどを修正し、先発復帰に備えていた。

 打つべき理由もあった。この日は、長女の3歳の誕生日。メジャー挑戦を決めた11年オフに生まれた第1子の成長が生活の支えでもあった。ポストシーズン後は、遠征にも家族が同行する慌ただしさもあり、特別なお祝いもできない。グラウンドで活躍し、笑顔にすることが、青木パパのできるプレゼントだった。

 公式戦終了からちょうど1カ月。ついに、野球人として「最高の舞台」と言われるWS第7戦にたどり着いた。「負けても終わり。崖っぷちから勝ってきたチーム。必ず勝つと思ってやりたい」。普段は緊張するタイプではないが、試合後は「今、ドキドキしてきました」と笑った。しびれるような緊張感も、集中力が増す、プラス材料でしかない。【カンザスシティー(米ミズーリ州)=四竈衛】

 ◆日本人の世界一

 ワールドシリーズで出場登録され、優勝したのは過去8人。98年伊良部(ヤンキース)がパドレスとのシリーズで制覇したのが第1号(登板機会なし)。その後は05年井口(ホワイトソックス)06年田口(カージナルス。08年フィリーズでも経験)07年松坂、岡島(ともにレッドソックス)09年松井秀(ヤンキース)13年上原、田沢(ともにレッドソックス)がいる。