【サンフランシスコ(米カリフォルニア州)27日(日本時間28日)=大塚仁、四竈衛】2010年ワールドシリーズが開幕し、ナ・リーグ覇者のジャイアンツが、地元での初戦を白星で飾った。レンジャーズを相手に、序盤2点を先行されながら、ポストシーズン無敗の左腕クリフ・リー投手(32)を攻略し、5回途中でKO。14安打で11得点を挙げて快勝した。第2戦はジ軍ケーン、レ軍ウィルソンの両先発で行われる。

 難攻不落の相手エースを打ち崩したのは、脇役の2番サンチェスだった。2点を追う3回裏1死一、二塁から左翼線への適時二塁打を放ち、レ軍リーの連続無失点を16イニングで阻止。さらに、同点の5回1死二塁で左中間へ勝ち越しの二塁打を運んだ。「いい投手に対して、そこまでうまくいくなんて考えもしなかったよ」。第1打席からの3打席連続二塁打を含む4安打。06年の首位打者が、大舞台で輝きを取り戻した。

 昨オフ、左肩の手術を受け、春季キャンプはリハビリの途中だった。開幕後は38試合欠場。「タフな道のりだった。まだ自分が求めるような体調ではないが、それでも十分だよ」。つらかった当時を思い起こし、思わず記者会見中に声を詰まらせるほどだった。

 サンチェスだけでなく、打線全体でリー攻略に取り組んだ。かつてロッテ、ヤクルトでプレーしたミューレン打撃コーチは、試合前に速球が約70%とのデータから「速球狙い」の積極策を指示した。「これまでだれも(攻略に)成功しなかった相手。内角球を恐れず、アタックし続けることが大事だったんだ」。右打者の内角へのカットボールを頭に入れ、球にコンタクトすることを最優先させた。その結果、各打者がファウルで粘り、待球することなく、リーに3回まで60球、5回途中の降板時に104球を投げさせた。

 7番ウリベの3ランなど、終わってみれば今ポストシーズン最多の11得点。「ヒーローになんかならなくていい。チームが勝つためならバントでも進塁打でも何でもやるよ」。サンチェスの言葉に代表される謙虚な姿勢が、ジ軍の強さに違いない。