09年の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表監督を務めた巨人原辰徳監督(60)が、世界一の瞬間に見せたイチローの素顔を語った。

22日、都内で行われた「2019 読売巨人軍激励会」に出席。一直線に信じた道を歩んできた後輩に、感謝とともに尊敬の念を抱いた。第1回大会監督だったソフトバンク王貞治球団会長(78)も魅力を語った。

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野球ファンの脳裏から離れない米国・ドジャースタジアムで放ったイチローの決勝打。09年のWBC決勝の10回、試合前まで打率2割1分1厘と苦しんだ末の中前打に、日本中が歓喜した。原監督は苦しむ姿を間近で見てきたからこそ、直後のイチローを鮮明に覚えている。

「彼が決めて世界一を取った時に、シャンパンファイトで私が音頭をとらせてもらった。『強い侍になった』と。その時の彼の喜びよう。もう無邪気に、そのギャップというんでしょうかね。純粋に野球人である、そして勝利に対して強く戦っている姿勢は、まったく並ではない。厳しさと歓喜の姿は、私の中で非常に印象に残ってます」

10年後の今季、17、18日はともにユニホームを着て戦った。引退の決断については「現実的にやはり来るんだなと。少しびっくりしたのが正直なところ」と言って、付け加えた。

「4000本というヒットを打った人が最後、ヒットが1本も出なかった。やはり野球というのは難しいスポーツである。ヒットを打つということ、特にバットマンというのは、非常に高いレベルで戦っているんだと。あらためて野球の素晴らしさと、打撃の難しさを感じました」

開幕前にイチローを通じて感じた野球の奥深さ。「いろいろな道があったと思いますが、迷うことなく一直線に、迷っても自信を持って進んできた。そういう強さは後輩ですが尊敬するところ。会見でも動くことが大好きだと言ってましたので『少しゆっくりしてください』という言葉も彼には伝わらないのかな」とねぎらった。【前田祐輔】