日本ハム清宮幸太郎内野手(23)が“ソロアーチスト”を卒業した。ソフトバンク戦(札幌ドーム)の3回2死二塁、右中間へ12号2ランを放った。これまでの11本塁打は全てソロだったため、今季初めての複数打点アーチ。8回2死一塁からも13号2ランを放つなど、チームの2連勝と後半戦初のカード勝ち越しへと導いた。

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チャンスで本塁打が打てない-。スラッガーにとって悩ましかったジンクスを、ついに打ち破った。3回2死二塁の先制機。清宮が、今季初めて複数打点付きのアーチを描いた。東浜の3球目、139キロのカットボールを右中間席ギリギリに放り込んだ。「久々の感触。入ってくれと思いながら走っていました」。決勝弾となるチームトップ12号2ランに、満開の笑顔が咲いた。

一層の笑顔の理由があった。これまでの11本塁打は全てソロ。主軸として得点圏での1発が求められる立場で、ふがいなさが積もっていた。チームメートからは「めちゃめちゃ、あおられますよ。めちゃめちゃ言われます」と苦笑い。3点リードの8回2死一塁では、今季3度目の1試合2本塁打となる右越え13号2ラン。「やっぱり、たくさん点を取りたいので、そこが何よりです」と喜んだ。

飛躍を遂げようとする今、最高の道しるべが立っている。同学年のヤクルト村上が、前夜にプロ野球新記録の5打席連発を達成した。清宮は「ハンパないっすよ」と自分のことのように興奮しながら、「僕らの間では『村ゴッド(神)』と呼んでいるので。勝手にっすよ」とあがめている。プロ入り当初、多くのスポットライトを集めていたのは清宮だった。ともに高卒5年目。球界屈指の強打者となり、先を行く村上の背中を必死に追いかけている。

清宮 どんだけ打っても、頑張っても、上には村上がいてくれるので、やっぱり全然こんなんじゃ満足できない。常に自分にムチを打ってくれる存在。アイツがいてくれるから、もっと高みを目指せる。

チームは2連勝。ソフトバンク相手に6連勝を飾り、後半戦初の同一カード勝ち越しを決めた。この日は連日、マンツーマンで指導を受ける稲葉GMの50歳の誕生日。必死に汗を拭いながら「…知ってましたよ。そのつもりで打ちました」と笑った。覚醒の瞬間は、確実に近づいている。【田中彩友美】

○…プロ3年目の梅林が初のお立ち台に登場した。3回2死、右中間へ二塁打を放った。キャリア2安打目で札幌ドームでは初。次打者の清宮の2ランで生還した。リード面でも先発上原の好投を引き出した。ヒーローインタビューでは「ばあちゃんオレ打ったよ!!」と広島に住む祖母へのメッセージを書き込み、喜びいっぱい。緊張気味に「手が震えて、足も急に疲れてきました。何も考えずバットを振っただけです」と笑っていた。

○…先発左腕の上原が“沖縄出身対決”を制した。緩い球や落ち球を効果的に使い、8回を散発3安打無失点で3勝目。同郷の17年最多勝右腕、東浜に投げ勝った。2年前の対決では競り負けていただけに「もう1度チャンスが回ってきたということで、気合が入った」。プロ初完投&初完封は逃したが「疲れました。今日も、もう1イニング行けませんでした」と苦笑いだった。

○…アルカンタラが新型コロナ陽性判定から復帰後、即1発の活躍を見せた。2点リードの4回2死、右中間に11号ソロを運び、追加点を挙げた。この日から復帰したばかりだったが、好相性のソフトバンク東浜から今季4発目。「シンプルだね。打てるボールに良いスイングをする。それだけ。シンプル!」とご機嫌だった。