<広島4-11阪神>◇2日◇マツダスタジアム

 トラがV逸ショックから立ち上がった。5年ぶり優勝を逃して迎えた広島戦は19安打、11得点の大勝だ。打順組み替えで46試合ぶりに1番に座った鳥谷敬内野手(29)が2打点で自身初、遊撃手としても初となるシーズン100打点に到達。ブラゼル、新井に続く100打点トリオが結成された。3番に入ったマット・マートン外野手(29)は2本の適時打で今季209安打。94年イチローの日本記録「210」安打に王手をかけた。

 辛い夜が明けた。虎の選手会長には意地があった。まだ、宿敵巨人との2位争いが残っている。プロとして、勝負師としてファイティングポーズは崩せない。史上初の快挙を達成。一塁ベース上、鳥谷は決して表情を緩めなかった。

 鳥谷

 引きずっても仕方がないんで。残り試合がある。このままズルズルいく訳にはいかないから。

 前日1日広島戦に完敗し、V逸が決定。首脳陣は次なる戦いに向け、波に乗りきれない打線にテコを入れた。3番鳥谷と1番マートンを入れ替え、8月6日中日戦(ナゴヤドーム)以来、46試合ぶりに1番鳥谷を置いた。

 これが機能した。9月5日広島戦(マツダ)以来、21試合ぶりとなる2ケタ得点を、リードオフマン鳥谷が呼び込んだ。初回、右前打で先制のホームを踏むと4回にも右前打。3点リードした5回1死満塁の場面では、広島青木の高めスライダーを巧みに流し打った。走者2人が生還し、自身初のシーズン100打点に到達。遊撃手では史上初の大記録だ。

 今季までの遊撃手最高打点は90年ヤクルト池山の97打点。偉大なる先輩はもちろん尊敬しているが、残念ながらプレースタイルはあまり知らないという。「なかなかヤクルト戦を見る機会もなくて。すごい選手だということは当然知っていますけどね」。テレビを見る時間も割き、練習に明け暮れた。そんな少年時代が現在の礎となっている。

 早大時代は「オズの魔法使い」と言われたメジャー屈指の名手、オジー・スミス内野手の華麗な守備に魅せられた。では今は?

 理想の遊撃手像を問われると「そりゃあ、打って走って守れる選手に決まっている」と笑う。限りなく理想は高い。簡単には満足しない。勝利に貢献した証である打点が100に到達した。それでも「自分1人でできることじゃない。マートンとかも塁に出たり、つなげてくれたりしたから」と周囲に感謝し、自分自身への手綱を緩めることはなかった。【佐井陽介】

 [2010年10月3日12時5分

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