<巨人12-4阪神>◇28日◇東京ドーム

 虎の新外国人、4番マウロ・ゴメス内野手(29)が鮮烈デビューだ。3回2死一、二塁。巨人菅野から三塁線を破る2点適時二塁打だ。8回にも二塁打を放って4打数2安打。投手陣が12失点しての大敗でも、この男が光を差し込んだ。宿敵巨人との10年ぶりの開幕カード。初戦は落としたが、戦いは始まったばかりや。

 見たか!

 と言わんばかりに二塁ベース上で両手に拳をつくり、突き上げた。ゴメスが虎党に希望の一打だ。3回。2死一、二塁での2球目、内寄りの135キロのスライダーを振り抜いた。若干詰まりながらも持ち前のパワーをバットに伝えた。三塁村田が飛びつくが、打球は三塁線を切り裂くように抜けていった。2点二塁打だ。

 ゴメス

 来日初ヒットがチャンスでのタイムリーになって良かった。長打を打てたのは良かったし、これをこれからも続けていきたい。

 全速力で二塁まで走りきると、左翼から虎党の大歓声が待っていた。変化球にまったくタイミングが合わずに苦しんだオープン戦。見かねた和田監督の4番構想も一時ぐらついた。だが、最後の最後で仕上げ、座った開幕4番の座。虎の命運を握る新大砲が、いきなり結果を残した。

 大柄な体と対照的に繊細な一面を持ち合わせる。前日27日には、マートン、メッセンジャーと通訳やオマリー打撃コーチ補佐を招待し“国際決起集会”を行った。普段アルコールを口にしないゴメスは、この日に神経を集中させるかのように、乾杯の1杯のみをたしなんだ。根底にあるのはアスリート精神。リラックスした場でも、重要な一戦へ牙を研いでいた。

 ゴメスの一打は打線の流れも生んだ。タイムリー二塁打の直後、5番マートンが適時二塁打。新4、5番の連続長打を含め、この回3二塁打で4得点。オープン戦では1度もベストオーダーが組めずに、チーム打率が12球団ワーストの2割3分2厘だったことがウソのようだ。大敗を喫したが、4番を託した和田監督も「みんながそこ(ゴメス)につなごうと、そういう流れになればいい」と、今後への大きな収穫を手にしていた。

 8回には再び三塁線を破る二塁打。逆転負けで勝利には結びつかなかった。だが、ゴメスは前を向いた。

 「全員が最後まであきらめずに戦った。野球なので負けることはある。また明日からやっていく」

 宿敵巨人との開幕カード第1ラウンドは惨敗。しかし、ゴメスの2本の長打がチームの今後を明るく照らす。今日こそは快音とともに勝利を引き寄せる。【松本航】

 ▼ゴメスが2打点デビュー。阪神の外国人が開幕戦でマルチ打点は、アリアス(前オリックス)の02年3月30日巨人戦(東京ドーム)の2打点(2ラン本塁打)以来、12年ぶり。日本球界1年目の外国人では、オマリーが、91年4月6日大洋戦(横浜)で2打点して以来、23年ぶり。巨人戦で日本球界1年目の虎助っ人が打点を挙げたのは初めて。