旗揚げ47年目を迎える全日本プロレスが、新たな道を歩み出した。7月10日付でオーナーの福田剛紀氏(53)が社長に就任。秋山準前社長(49)は現場最高責任者のGMとなった。新体制となった全日本プロレスの今後の展望について、福田新社長と秋山GMに話を聞いた。【取材・構成=高場泉穂】

全日本プロレスのさらなる発展を目指す福田剛紀新社長(左)と秋山準GM
全日本プロレスのさらなる発展を目指す福田剛紀新社長(左)と秋山準GM

大の全日本ファンだった福田社長がトップに就くことは必然だったのかもしれない。小学校4年生で賞をとった作文の題は「プロレスを見にいったこと」。デストロイヤーにサインをもらったうれしさを書いたものだった。全日本との接点ができたのは約7年前。経営している都内のビルにテナントとして全日本が入ったことから。15年12月に筆頭株主となって以来、オーナーとして裏方で経営を支え、今回満を持して秋山から社長の座を引き継いだ。

「電柱看板の仕事をしていまして、一生看板屋さんで終わるのもいやだなと思っていました。人生後半にひと花咲かせられないかなと。この年になってかなうとは感慨深いです。でも責任は重大。全日本の灯を消しちゃいけない」。培ってきた経営術と愛情で全日本のさらなる発展を目指す。

新体制に踏み切ったのはこの5年で経営がジリ貧状態から右肩上がりに転じたから。それでも「まだまだ厳しいところもたくさんある」と秋山GMは正直に明かす。「いまうちの(ツイッター)フォロワー数が2万ちょっと。その中でもしっかり見てくれているのは10分の1ぐらいだろう。それを増やしていかないと」。昨年3月から始めた動画サービス「全日本TV」の契約者数も「まだ十分ではない」(福田社長)。広告、SNSを通じてさらなるファン拡大に努めるほか、英語版の動画の配信も検討中。世界中のファン獲得に向け、情報量を増やして行く予定だ。

来年、新日本プロレスは東京ドーム2日連続興行、DDTはさいたまスーパーアリーナ大会実施と攻めの姿勢を打ち出している。だが、全日本はこの2年間を「足固め」にするという。秋山GMは「ちょっと前に冒険したこともあったけど、大変だった。それより後楽園でお客さまを着実に増やしていくほうがいい。今は宮原(健斗)がいて、ジェイク(リー)、野村(直矢)らが並ぶぐらいになれば」。福田社長も「いずれは武道館で、という思いはあるが、時期がきたら」と慎重な姿勢を示した。

リングのさらなる充実も課題だ。秋山GMは「うちの選手は言葉の力が足りない」と課題を挙げた。「俺だったらもっとこういう風に言うのに、というのがたくさんあるんですよ。でも四六時中言うわけにもいかないし、教えても俺の言葉になってしまう。個々の自覚に任せるしかない。アンテナをもっと広げて、他の選手の言葉を拾ってキャッチボールしてほしい。そうすれば試合ももっと面白くなる」。激しい戦いはそのままに、さまざまな方策で新たな全日本プロレスを築く。