プロボクシング元日本スーパーライト級王者で、昨年7月に現役を引退した細川バレンタイン氏(41)が、日刊スポーツを通し、エンターテインメント色に傾く現在の格闘技界に警鐘を鳴らした。

先月25日に行われた格闘技イベント「超(スーパー)RIZIN」で行われたボクシングに準じたエキシビションマッチでプロボクシング元世界5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(45=米国)と対戦した総合格闘家の朝倉未来(30=トライフォース赤坂)を、「ぜんぜん相手にならなかった」と辛口評価。現状のままでは、格闘技界の発展はないと一石を投じた。

◇   ◇   ◇

世界50カ国以上に配信された「超(スーパー)RIZIN」では、人気総合格闘家がボクシング界のレジェンドに対し、相手の土俵に立って「挑戦」するという構図が話題を呼んだ。試合では朝倉がメイウェザーの顔面にパンチを当てるなど、善戦。2回終了間際にメイウェザーのカウンターの右ストレートでTKOを喫したものの、朝倉の世間の評価は高まった。

だが、細川氏の意見は異なるものだった。

「たいていの人間は最後のKOで倒れたところだけを見て『やっぱりメイウェザーだ』と思っていると思うんですけど、パンチの当たり方、それまでの持っていき方…。はっきり言ってボクサーやジャッジしている人たちからしてみると、朝倉は相手になっていなかった」と言い切った。

そして「もし3ラウンド戦いきっていたら(世間に)『互角に戦った』と思われていたわけですよ。そうならなくて本当によかった。メイウェザーはよくやってくれた」と、ため息をもらした。

なぜ、こうまで言うのか。細川氏は、運営がボクシングに対するリスペクトを欠いていると主張する。

「ある意味、彼らがやろうとしていることは、『自分の競技でもないボクシングを片手間でやってもこんなにできるんだよ』というのを見せつけることですよね」

確かに、エキシビション戦(非公式試合)であるにもかかわらず、運営側もメディアも「真剣勝負」「世紀の一戦」といったように大々的なプロモーションを行った。細川氏は、そういった行為に対し、「競技の価値を下げかねない」と非難。「あれはただのショー。本来であればそのように伝わらないといけない」と、不快感をあらわにした。

もちろん、細川氏に朝倉やRIZINをおとしめようという魂胆があるわけではない。「RIZINもあんなことができるんだからすごい」「朝倉選手は本当にすごいと思う。当てることのできる日本のボクサーは何人いるの?」と、一定の評価を下した。だが、このままでは格闘技界の発展はないと断言する。

「こういった(否定的な)意見を言うと、必ず『アンチだ』とたたかれてしまう。白か黒か、ゼロか100かでしか物事を見られない人が多い。でも、それはおかしいと思う。格闘技界も、今回のようなプロモーションを続けることで、結果的に競技をしりすぼみにさせていると思います」。

ボクシング、格闘技への愛ゆえ、その訴えには熱がこもっていた。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

◆細川バレンタイン(ほそかわ・ばれんたいん)1981年(昭56)4月16日生まれ。宮崎県宮崎市出身。06年に宮田ジムからプロデビュー。16年に角海老宝石ジムに移籍。17年に4度目となるタイトル挑戦で日本王座を獲得するなど活躍した。昨年7月に引退。現役時代から外資系金融機関で働くなど、“インテリ”ボクサーとして注目を集めており、現在は不動産賃貸事業や宿泊事業、ユーチューブなど、さまざまな分野で幅広く活動。ユーチューブチャンネル「前向き教室」では、歯に衣(きぬ)着せぬ発言で人気を博している。https://www.youtube.com/channel/UCRKutOrnx5S0tTxUR_wNYqA

10年、現役時代の細川バレンタイン氏
10年、現役時代の細川バレンタイン氏