現役女子高生ボクサーだけでも珍しいが、しかも20歳。日本女子ミニフライ級5位小村楓香(グリーンツダ)が8月11日に枚方市立総合体育館で同級7位一村更紗(堺東ミツキ)との同級王座挑戦者決定戦に挑むことが29日、大阪市内のジムで発表された。日本女子タイトルは今年新設されたもので、勝者が12月に予定される王座決定戦に進む。

 「きっちり勝ってベルトを持って卒業したい。女子高生の間にチャンピオンになりたいんです」という小村は、6月5日に20歳の誕生日を迎えた。制服姿にショートの黒髪。プロゴルファーの宮里藍に似た顔立ちだが、一時は自身を見失っていた。「この春、奇跡的に進級できました」とジムの本石昌也会長が冗談めかす。2度の留年で今春、ようやく門真西高の3年生になった。

 「希望も何もなくなってクズみたいな生活をしてました」。小学2年から空手、中学で「蹴りよりパンチが得意だから」と大阪帝拳でボクシングを始めた。幼いころから練習、練習の日々。「反動があったんですね、遊びたい」。高校入学後はすべて投げだし、アルバイトの毎日。いくつか掛け持ち、月収は10万円以上あったという。「お金も持って何でもできる、と。先輩と夜遊びの毎日でした」。

 補導歴こそないが16、17歳のときは金髪、カラーコンタクト、つけまつげにエクステ、そしてミニスカートとギャルを精いっぱい“演じて”いた。「遊んでいても、何かむなしい。そんな毎日でした」。最初の留年となった2年前の5月、ゴールデンウイーク明けに家出した。「もう家に戻るつもりはなかったんですが…」。5日間ほどで戻ると、両親と真剣に話し合った。「やっぱりボクシングがやりたい」。母真子さんは「見学だけでも行ってみれば」と背中を押してくれた。たどり着いたのが、グリーンツダジムだった。

 「必死に何かを追いかけている自分が好きと、あらためて知りました」。見失っていた目標が明確に見えた。朝練、学校、そしてジムワークの日々が楽しく、充実している。「今年は絶対大丈夫。昨年より勉強が楽だし、やることをやれば卒業できます!」。次戦に勝てば、夢に見るベルトに王手をかける。

 6月5日。クラスメートが「ハッピーバースデー」で祝ってくれた。しかし、ある1人に「いくつなん? げっ20歳? 2個上やん」と驚かれたという。「17歳の時に描いていた20歳とは全然違う。あまりに変化がなさすぎてびっくりです」とくったくない笑顔に、かつてのやんちゃな面影はかけらもない。無傷の5連勝でタイトル戦へ。20歳の現役JKボクサーは、ベルトを掲げて来年の成人式、そして卒業式出席の野望を抱いている。【実藤健一】

 ◆小村楓香(こむら・ふうか) 1997年(平9)6月5日、大阪・門真市出身。小学2年から空手、中学ではボクシング。3度目の高校2年の昨年、グリーンツダジムに入門。戦績は4勝(2KO)無敗。好きな有名人はユーチューバーヒカル。「考え方が好きなんです」。身長151センチの右ボクサーファイター。