5月20日、4回にダウンを奪い優勢かと思われた試合は、1-2でエンダムに軍配。判定直後、控室に20分こもり涙を流した。世界の層が厚いミドル級タイトル戦の国内開催へ尽力してくれた関係者への自責の念だった。不満は言わず潔かったが、周囲は判定への批判が渦巻いた。WBAのメンドサ会長が誤りを指摘し、再戦指示する異例の事態に。ただ、試合後の2人には異なる感情が生まれた。
翌21日午前9時半、村田は同宿のエンダムの部屋の内線を鳴らした。15分ほど会話し、連絡先を交換した。「判定は僕らの問題ではない。素晴らしい経験をありがとう。昨日は敵だったけど、今日は友だ」と伝えた。エンダムは「電話に驚いた。対戦した相手と彼より前に友達になったことはなかった」と振り返る。
両陣営の交渉開始は先月。エンダムは「村田選手は伝説になっていく。また良い試合をしたかった」と日本開催を快諾した。5月は国内最大規模の5億円の興行規模だったが、それ以上となる舞台が用意された。
「リマッチは苦手ではない。でも、あまりにも近しくなってしまった空気感というのが少し、違うかな…」。懸念はするが、敬意を持ち合うからこそ、非情に打ち合う覚悟を高める。「リングに上がったら互いに関係ない。殴り合います」と固く誓った。
昨日の敵は今日の友ならば、今日の友は明日の敵。エンダム以前は世界の一線級との対戦はなかった。「半信半疑だったが今は自分を信じられている」。通用する確信を手に、再び挑む。「完全決着できれば、1つ上のステージにいって、1つ大きな試合が待っている」。友を越えた先に、道を開く。【阿部健吾】


