WBC世界フライ級王者の比嘉大吾(22=白井・具志堅スポーツ)が14戦全勝全KOで初防衛に成功した。同級5位トマ・マソン(27=フランス)を7回にとらえてダウンを奪取。同回1分10秒、レフェリーストップのTKO勝ちをおさめた。沖縄出身王者で初めてKO初防衛に成功。大みそかにWBA同級王者・井岡一翔との団体統一戦もぶちあげた。

 ロープ際にマソンを押し込み、比嘉がボディーに、顔面に左の5連打を打ち抜いた。ガード上手な挑戦者を眼前に「ロマゴンを思い出した」。尊敬する元世界4階級制覇王者ゴンサレス(ニカラグア)ばりのラッシュをみせた。7回、再び左で右目上をカットさせ、さらに傷口に左フックの嵐。痛みに耐えかねてヒザをついたマソンを人生初のダウンに追い込んだ。そのままドクターストップ。具志堅会長のKO指令が出る前に決着をつけた。

 「最後は(マソンが)目を痛がって座っちゃいましたね。タフだなと思ったので目を狙った。KOは気分良かったですね」

 試合後、米プロモート大手トップランクのボブ・アラムCEOと握手を交わし「グッドファイター」と祝福を受けた。「通訳さんがいてくれたら話せた。米国で試合できたかな」と冗談も飛ばす余裕があった。

 初防衛戦に備え、フライ級のリミット(50・8キロ)とほぼ同じ50キロの重さのバーベルを両腕で持ち、重量挙げ選手さながらにスナッチやジャークで瞬時に持ち上げる練習メニューを繰り返してきた。「ハードな練習してきたのでKOでないと満足できない」。マソンの体をロープ際まで吹っ飛ばすパワーが肉体に十分、備わっていた。

 高校時代は全国的に無名の存在だった。同学年に「スーパー高校生」と言われたWBO世界ライトフライ級王者・田中恒成、WBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥の弟で元東洋太平洋同級王者の拓真がいた。「雲の上の存在」と振り返る2人に追いつき、追い越すことが目標だった。「あの2人はうまいけれど一番面白い試合をするのは比嘉と言われたい」。沖縄出身王者で初めてKO初防衛に成功。日本人の対フランス人世界戦初勝利を挙げた。日本記録に王手をかける14連続KO勝ちのパーフェクトレコード。十分すぎるインパクトを残した。

 勝利後、リング上でWBA世界フライ級王者・井岡の名を挙げ「大みそかでもいいので統一戦をやりましょう」と叫んだ。具志堅会長も本人の意向を受けて交渉に入る構えだ。井岡戦で日本記録を達成する最高の舞台を、自らの両拳で整えてきた。【藤中栄二】

<比嘉大吾(ひが・だいご)アラカルト>

 ◆生まれ 1995年(平7)8月9日、沖縄・浦添市。

 ◆スポーツ歴 保育園まで水泳と体操の教室に通う。宮城小2年から野球をはじめ、宮城ドリームズに所属。6年で主将を務め、市内大会で創部初の優勝。仲西中でも野球部で主将。

 ◆具志堅に憧れ 中学3年の時、具志堅用高会長の現役時代のKO動画をテレビで見て触発され、宮古工でボクシング部へ。国体8強が最高成績。通算36勝(8KO・RSC)8敗。

 ◆プロ転向 高校卒業後に上京し、白井・具志堅スポーツに入門。14年6月にデビューし1回KO勝ち。

 ◆王座 15年7月にWBCユース・フライ級王座を奪取。16年7月に東洋太平洋フライ級王座も獲得。

 ◆家族 両親と兄。

 ◆スタイル 身長160・8センチの右ファイター。