ゴールデンスターがついに輝きを放った。Aブロック1位の飯伏幸太(37)がBブロック1位ジェイ・ホワイト(26)を破り、G1初優勝を果たした。今年2月、覚悟を胸に新日本に再入団。デビュー15年目の節目に来年1月東京ドーム大会でのIWGPヘビー級王座挑戦権を獲得し、その先の壮大な夢も思い描いた。

飯伏は逃げず、あきらめなかった。介入してきた外道に開幕戦で負傷した左足首をとらえられ、ホワイトにパイプイスで殴打される。激痛で顔をゆがめながら必死にロープへエスケープした。それをきっかけに飯伏の目に狂気の光が宿る。非道な攻撃をかわし、中邑真輔から引き継いだ「イヤァオ」の“たぎり”からのボマイェ、技の切り返しの応酬から必殺技カミゴェ3連発を決め、強敵ホワイトを沈めた。デビュー15年目で悲願の称号を手にし、「さいっこうにうれしいですよ」とビールを浴びるように一気飲みした。

並外れた身体能力、恵まれたルックス、天性のひらめき。その才能がここにきて開花したのは覚悟を決めたからだった。今年2月、約3年続けたフリーの立場を捨て、新日本に再入団した。その裏では盟友ケニー・オメガが移籍した米国の新団体AEWから熱烈オファーを受けていた。オーナーから提示されたのは日本のプロ野球選手トップクラスの年収。日本で活動する限り到底届かない額だった。それでも、きっぱり断った。お金で自分の心が動かぬことを再確認した。そして、まだ届かぬIWGPヘビー級のベルトを巻き、プロレスをもっと広める夢をかなえると決めた。

5度目のG1で初制覇し、その夢に一歩近づいた。IWGPヘビー級王座挑戦権を獲得し、「取りたい。本当に実現する」と初戴冠を力強く宣言。さらに「どんどんみんなで大きくしていきたい。これから新日本は新しい時代に進みます」とその先の夢も語った。レスラーとして終身新日本にいると決めたのは、世界中のリングで最も影響力があると信じているから。ゴールデンスターが、覚悟を胸にプロレス界を変えていく。【高場泉穂】