ボクシング5階級制覇王者でWBA世界バンタム級スーパー王者のノニト・ドネア(36=フィリピン)が静かに闘志を燃やした。

7日、さいたまスーパーアリーナで控える3階級制覇王者のWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)とのワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)決勝に向けた前日計量が6日都内で開かれ、ドネアは200グラム少ない53・3キロで1発パス。井上尚とはフェイスオフの写真撮影で20秒ほど目を合わせた。

「特に何も感じなかった。向かい合って目を合わせただけ。明日のリングで何かを感じたい」。

計量後、まず水分補給し、サラダとフルーツを口にしたフィリピーノ・フラッシュ(フィリピンの閃光)にはオーラが漂った。WBSS準決勝となる4月のステファン・ヤング戦の6回KO勝ちで区切りのプロ40勝を飾った。IBF世界フライ級を皮切りにWBA世界フェザー級スーパー王座まで実に5階級を制覇。バンタム級、スーパーバンタム級では2団体統一王者にも君臨した。WBCにもバンタム級、スーパーバンタム級でダイヤモンド王座を獲得してきた風格は、より大きな存在感として伝わってくる。

井上尚を倒すための秘策を問われ「秘策はない。自分の経験による引き出しが今までにある。それを使うことが作戦になる」とだけ言った。通常体重は58・9キロで、減量は5キロほどだった。試合当日にはリミット53・3キロから5キロ程度の増量でリングに上がるという。

海外オッズでは、ドネアが不利になっているものの「オッズとか、どちらが勝つとかは予想は関係ない。他人が決めたこと。自分には自分が信じる力がある。気にしていない。今まで同じ状況でも勝ってきたから」と不敵な笑みを浮かべた。勝てば新たに階級最強の証明となるアリ・トロフィーが手に入る。「あのトロフィーをリングで持つことを楽しみしている」と最後まで平常心を崩すことはなかった。

過去には元WBC世界バンタム級王者長谷川穂積を下したWBC・WBO世界同級王者フェルナンド・モンティエル(メキシコ)や元WBC世界スーパーバンタム級名誉王者西岡利晃も下すなど、日本のリングでも強さを証明してきたボクサーたちを次々と下してきた軽量級のレジェンド。今度は無敗の若きモンスター井上尚の大きな「壁」なる覚悟ができている。