WBA世界ミドル級王者の村田諒太(33=帝拳)が初防衛に成功した。KO率8割を誇った同級8位スティーブン・バトラー(24=カナダ)の挑戦を受け、5回2分45秒、TKO勝ち。右3連打から最後は左フックでアゴを打ち抜き、レフェリーストップ勝利し、19年を締めくくった。契約を結ぶ米プロモート大手トップランク社のボブ・アラムCEOは、日本で他団体王者のビッグネームと王座統一戦を組む意向も示した。

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派手な中量級の強打がうなった。激しいボディーワークで追い、村田は何度も強烈な右拳、左ボディーをねじ込んだ。3回以降、クリンチで逃げる挑戦者を逃がさない。5回。右3連打で動きを止め、左フックであごを打ち抜き、とどめを刺した。「息子(晴道くん)に、次の試合に行きたいから負けないでと言われていた。約束を果たせた」とほっとした笑みを浮かべ「自分のボクシングをやっと確立できた」と満足顔。トップランク社アラムCEOの指令に応えるKO劇に自ら及第点を出した。

昨年10月、米ラスベガスで臨んだ当時のWBA1位ブラント(米国)とのV2戦の反省を生かした。勝てば他団体王者との統一戦が実現しそうな中で判定負け。今回の挑戦者も村田戦決定までWBO1位で王座指名挑戦権を持ったホープだった。勝てばビッグマッチの可能性が広がる状況も似ていた。「ブラント1戦目もラスベガスでモチベーションが高かった。ただ対策がなく中身がなかった。しっかり練習で中身を詰める作業が大事だった」。

地道な積み重ねこそが、未来につながる。頭を整理し、一戦集中した。毎週水曜日に6~8回の長いスパーリングに取り組む「週1ピーク」トレを導入。試合3週前まで自転車型トレーニング器具をこぐフィジカル練習を延長。機動力と心肺機能を高レベルに保った。準備万全の強打さく裂だった。

19年を2勝2KOで締めくくった村田は「(井上)尚弥の試合を見て思うでしょうけれど、やっぱりリアルと戦いたい」と本音を口にした。この希望に反応したのが、アラムCEOだ。世界的知名度の高いWBAスーパー、WBCフランチャイズ王者アルバレス(メキシコ)、元3団体統一王者のIBF王者ゴロフキン(カザフスタン)の名を挙げ「東京五輪の前と後、この2人と東京ドームで村田が対決するイベントをやりたい」とぶち上げた。

12年ロンドン五輪金メダルから8年。「ロンドン五輪の8年後なんて無理やぞと思っていたらやっていました。東京が盛り上がっているので花を添えられるように」。今、世界でもっとも大金が動き、注目を浴びるミドル級。五輪イヤーに村田がビッグファイト実現の好機を待つ。【藤中栄二】

▽WBAスーパー、IBFバンタム級王者井上尚弥「ガードを固めてしのいでしっかり相手の隙をついて、倒しきった。ボクシング界は熱くなっていると思う」

▽元WBC世界スーパーフライ級王者川島郭志氏「序盤は硬くなっていて、パンチも研究されていた。ブロックされていたが、そこをフィニッシュにまで持ち込んだ。すばらしかった。名前の挙がっている強い相手とどんどんやってほしい」

▽元世界3階級王者長谷川穂積氏「(村田の相手は)強かった。採点は競っていなかったけどいい選手。その相手にしっかり勝てたことが素晴らしい」