新型コロナウイルス感染拡大で県内の格闘技道場、ジムも活動中止に追い込まれている。キックボクシングジム「KAGAYAKI」(燕市)もそのひとつ。伊達皇輝代表(44)は、燕市の市民講座や県内の小学校、保育園でキックボクシング教室を開くなど、社会貢献活動を行ってきたが、現在はそれも休止中。そんな苦しい状況の中、再開後を見据え、準備を進めている。

誰もいないジムを1人で黙々と掃除するのが伊達代表の日課となった。「練習を始められるようになった時にきちんと指導できるようにしておく」と時折、シャドーで汗を流す。「練習生を驚かせたい」とサンドバッグを7個から10個に増やした。いつでもジムを開く準備はできている。

4月16日に新型コロナウイルスによる緊急事態宣言対象地域が全国に広がった。その直後からジムの活動を停止。伊達代表の元には練習生から再開のめどの問い合わせや、パーソナルトレーニングの依頼が来る。それでも「ここから感染者を出すわけにはいかない」と自粛を続ける。

燕市で10年以上講師を務める市民講座のキックボクシング教室も休講中。それでも三条市、長岡市などの小学校からキックボクシング教室の出張依頼が6件来た。ボランティアで毎年40校以上を回っているライフワーク。「『コロナが終息したらぜひお願いしたい』と言っていただきました。うれしいです」。重苦しい雰囲気の中、救われた気持ちになった。

県内格闘技界のレジェンド的存在だ。マーシャルアーツのウエルター級で日本王座、亜細亜統一格闘技協会の同級王座に就いた。デビューから18連勝を記録し「豪腕」とうたわれた。引退後、燕市でジムを構えて14年目。自分を輝かせてくれたキックボクシングの楽しさ、夢をつかむ努力の尊さを子どもたちに伝えたかった。その思いが学校、地域の指導につながった。

「夢をあきらめない」。練習生や子どもたちに伝えてきた言葉をコロナ禍の今、自分に投げかける。「今秋、地元の弥彦村でキックのイベントをやりたい」。これまでもジムで格闘技イベントを開催し、400人以上が集まったこともある。地元で初めて行うことがモチベーションになる。「そのために今は備える」。気持ちを抑え、力を蓄える。【斎藤慎一郎】

◆伊達皇輝(だて・こうき)1975年(昭50)10月14日生まれ、弥彦村出身。巻農高(現巻総合高)卒業後、キックボクシングを始める。97年、マーシャルアーツの日本ウエルター級王座を獲得。00年には亜細亜統一格闘技協会同級王者に。01年に引退後、07年にキックボクシングジム「KAGAYAKI」を創設。現役時代の戦績は18勝(10KO)3敗。