キックボクサー江幡塁(29)が、7月18日に亡くなった親友三浦春馬さんに白星をささげた。RIZINキックルールで植山征紀(24)と対戦し、激しい打ち合いの末、3-0で判定勝ち。三浦さんを思いながら臨んだ昨年大みそか以来約7カ月ぶりの試合で、復活勝利を果たした。

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親友三浦春馬さんがこの世を去ってから3週間。悲しみを乗り越えた江幡が勝利を手にした。勝負は最終3回。序盤に右ストレートでダウンを奪い、直後に激しいパンチの攻防で流血した。両者流血のためいったん試合は中断したが、再開後も最後まで激しく打ち合い、判定勝利を引き寄せた。

リングでマイクを持つと、三浦さんについて自ら語った。「僕が茨城で小さい頃から夢を語ってきた親友がなくなりました。本当につらくて、つらくて、目の前が見えないぐらい、つらくて…。でも僕の生き様はリングで見せるしかない。どんなにつらいことがあってもリングで、メッセージを送りつづけます。僕はこのリングに立てたことを感謝します」。三浦さん、兄睦と誓った「格闘技で輝く」という夢のため、力強く歩き出した。

三浦さんとは地元茨城・土浦市の小学校で知り合って以来の親友。昨年大みそかのRIZIN那須川天心戦では一緒に花道を歩き、セコンドにもついてくれた。那須川に敗れて以来の復帰戦となる8月の試合に向け調整していた時に届いたまさかの訃報。ショックで「パニック状態だった」。数日練習ができない状態が続いたが「僕は格闘家なので戦わないとと思った」。兄睦、ジムの仲間の励ましに支えられ、再び練習を再開。この日を迎えた。

“一燈照隅万燈遍照(いっとうしょうぐうまんとうへんしょう)”という天台宗の開祖、最澄が説いたとされる言葉をリングで口にした。「1人で頑張っていても隅っこしか照らせないけど、おのおのが隅っこでもいいから輝いて、それが集まったら国をも照らす大きな光になる」。親友の死と向き合った自分だけではなく、コロナ禍と戦う人々を思い、前を向こうと呼びかけた。【高場泉穂】

◆江幡塁(えばた・るい)1991年(平3)1月10日、茨城県土浦市生まれ。小4で空手を始め、中1でキックボクシングに転向。07年9月、新日本キックボクシング協会の試合で双子の兄睦とともにプロデビュー。これまで日本バンタム級王者、KING OF KNOCK OUT初代王者に輝き、現在はWKBA世界スーパーバンタム級ベルトを保持する。165センチ、56キロ。