昨秋G1クライマックス連覇の飯伏幸太(38)が、内藤哲也(38)を破り、IWGPヘビー級、同インターコンチネンタルの2冠王者に輝いた。

昨年11月、ジェイ・ホワイト(28)に“疑惑の判定”で内藤への挑戦権を失った。その後に内藤から指名で得たチャンスだった。デビュー17年目で悲願のヘビー級ベルトを獲得して5日、因縁の相手ホワイトを迎え撃つ。

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欲しかった新日本の至宝、ヘビー級のベルトを4度目の挑戦でようやく手に入れた。デビュー17年目。これまでジュニアのころからほとんどのリーグやトーナメントを制覇してきた飯伏でも届かなかった。リング上で内藤から直接ベルトを手渡され、たたえられた。「内藤さん、ありがとうございます」と会場を去る戦友に言葉を送った。「僕の手元にあるのが夢のよう。小さなところからコツコツやってきて。よくここまでたどり着いた」と声を詰まらせた。

3カウントは無意識で奪っていた。勝利後、その場に倒れ込んだが、しばらくして立ち上がると、まだ試合が終わっていないと勘違い。内藤をフォールし始め、レフェリーに止められた。意識がもうろうとするほどの死闘だった。

同い年2人の殴り合いは最後まで続いた。技を出す度に叫び声が東京ドームに響き渡った。内藤の必殺技「デスティーノ」を受けても立ち上がり、自分の必殺技「カミゴェ」は3度繰り出し、ようやく沈めた。

お互いを特別な存在と位置付ける内藤とは「昔から意識し合ってきた。一時期僕の方が良かったけど、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンを作って、一気に追い抜かれた」と差を感じていた。「内藤哲也からこの2つのベルトを取ることが夢だった」。ライバルにようやく並んだ。

昨年1月の東京ドーム大会では、オカダに敗れ、ヘビー級王者に届かなかった。10月には蝶野、天山に続く史上3人目のG1連覇を成し遂げながらも11月、内藤への挑戦権を争う権利証争奪戦でホワイトに敗れる屈辱。相手の足がロープにかかった状態で3カウントを奪われるという“疑惑の判定”だった。失望の中、内藤から対戦相手に指名されたが「本当はジェイを倒してからやりたかった」と素直に喜べなかった。

試合後には5日に対戦するホワイトがリングに登場。「お前は明日で終わりだ」と一蹴した。ようやくリベンジの時が来た。「僕は1日じゃ終わらない。逃げない、負けない、あきらめない。勝って本当の神になる」。最高と最強のベルトを手にした新王者は、大観衆の前で声高らかに2冠防衛を誓った。【松熊洋介】

◆昨年11月の2冠王座挑戦権利証争奪戦 20年11月7日、エディオンアリーナで、史上3人目のG1連覇を果たして権利証を得た飯伏がホワイトの挑戦を受けた。敵セコンドの外道の介入をくぐり抜け、得意のカミゴェに入ったが、逆さ抑え込みで丸め込まれた。レフェリーの死角を突き、ロープに両足をかけたホワイトに3カウントを許すというダーティーなフォールで屈し、史上初の権利証移動を許した。