「宇宙一かわいいアイドルレスラー」が長い髪を死守した。敗者髪切りマッチとして行われたワンダー・オブ・スターダム選手権は、挑戦者中野たむが、王者ジュリア(27)に勝利し、シングル初タイトルを手にした。

終始ジュリアのペースだった。場外で首を絞められ鉄柵に何度もぶつけられた。テーブルの上に乗せられてパイルドライバーを食らったが、立ち上がった。トワイライトドリームで逆転の3カウント。「やっとジュリアに勝てた。もう十分。これ以上いらない。髪なんて切らなくていい」とジュリアに中止を促したが「髪の毛もベルトも人生もかけて戦ったから」と拒否された。リング上で潔く椅子に座り、美容師から髪を切られるジュリアを号泣しながら見守った。

16年のプロレスデビュー後「1度も髪を切ったことがない」という中野。長い髪をなびかせて戦うのが強いレスラーだというイメージを持ち、シャンプーやトリートメントは1本1万円のものを使用している。だが、今回は髪を切られるリスクよりも、ジュリアと戦いたい気持ちの方が上回った。昨年7月、10月とシングルマッチで連敗。同11月にはユニット「COSMIC ANGELS」を結成し、リーダーとなった中野にとって、どうしても倒しておきたい相手だった。

10周年記念大会の最後に新王者としてリングに立った。試合後は疲れた表情の中、傷だらけの体でバックステージへ。アイドルらしさこそなかったが、念願の白いベルトを腰に巻き、満面の笑みで余韻に浸った。「スターダムの中心になって、今後の人生をばら色にする」。髪はもう少しで理想の長さになるという。その時までベルトを守り続け、理想のアイドルレスラーとなる。【松熊洋介】