WBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)が19日(日本時間20日)、米ネバダ州ラスベガスでIBF同級1位マイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)との防衛戦(WBA5度目、IBF3度目)に臨む。昨年10月以来のリングは日本人初の2戦連続「聖地」防衛戦となる。WBC王者ノニト・ドネア(38)、WBO王者ジョンリール・カシメロ(31=ともにフィリピン)も視察する一戦。対抗王者の目の前で実力を証明し、統一へ弾みをつける。

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バンタム級の4団体統一を狙う井上が「朗報」を受け取った。19日のダスマリナス戦には、昨年4月に統一戦で拳を交えるはずだったWBO王者カシメロ、5月下旬にWBC王者となったドネアが視察する予定。9日にラスベガス入りし、最終調整を続けているモンスターには大きな刺激になった。

試合1週間前となる12日には全米中継のボクシング興行に異例の出演を果たした。「実力差をみせ、次の統一戦に向けて良いパフォーマンスをみせたい」と宣言。解説者の元世界2階級制覇王者アンドレ・ウォード氏から「今のモチベーションは何か」と問われると「今、バンタム級でのモチベーションは4団体統一です。この試合に勝てば、土曜日に見に来るドネア、カシメロとの戦いになる。それに備えてです」と強い決意を示した。

「いつも通りです」。最終調整を続ける井上は、自信と手応えを込めた言葉を発してきた。昨年10月のジェーソン・モロニー(オーストラリア)戦以来約7カ月半ぶりに戻ったボクシングの本場。自身4度目の海外防衛戦でもあり、独特な空気にも「慣れました」と言えるほど冷静だ。

身長170センチのサウスポーのダスマリナスはIBF1位として指名試合を待っていた。独特なリズムと左ロングフックが武器。井上のようなオーソドックス(右構え)には、もっとも攻略が難しいとされるタイプだが、涼しい顔で言う。「そんなに攻め急がず、ゆっくりと調理しようかなと思う。一発だけに気をつけて、しっかりと組み立てられれば、いつかは捕まえられる相手」。16度目の世界戦で、14度目のKOを自らのハードルに課した。

昨年10月の無観客とは違い、今回は入場制限がない有観客興行となる。ラスベガス独特の雰囲気の中でリングに立つ。「毎回そうですけどリングに上がらないと分からない部分がある。本当にリングに上がって感覚的につかんでいくタイプなので。当日の自分にも楽しみです」。カシメロ、ドネア、会場を埋める観衆、そして画面越しで見る世界中のファン-。2戦連続となるラスベガス防衛戦のリングで、井上が再び躍動することになる。

<井上尚弥の世界戦記録アラカルト>

◆連勝 15連勝中で日本歴代1位。2位は具志堅用高の14連勝、3位は山中慎介の13連勝と続く。

◆KO数 13KO(15試合)で日本歴代1位。2位は10KOで内山高志(14試合)、井岡一翔(19試合)。3位は9KOで具志堅用高(15試合)、山中慎介(15試合)と続く。

◆海外防衛 3度成功は日本歴代1位、2位は2度の西岡利晃、亀田和毅

◆最短KO 18年10月のパヤノ戦でマークした70秒(1分10秒)は日本歴代1位。2位は平仲明信が92年4月にマークした92秒(1分32秒)。

◆世界戦勝利数 15勝は歴代2位。1位は井岡一翔の持つ17勝

★ダスマリナスとは 19年3月、デメリショ(フィリピン)とのIBF世界バンタム級挑戦者決定戦で判定勝ちし、IBF1位を2年近くキープする。同年10月が最新試合で、井上への挑戦が約1年8カ月ぶりのリングだ。身長170センチの左ボクサーファイターで、左拳を軸としたストレート、アッパーが武器となる。タイトルはWBCユース・スーパーフライ級王座を獲得。かつて元WBC世界バンタム級山中慎介氏をはじめ、19年10月には井上の弟で元WBC世界同級王者拓真の練習パートナーとして来日経験がある。

◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。元アマ選手の父真吾さんの影響で小学1年から競技を開始。相模原青陵高時代にアマ7冠。12年7月にプロ転向。国内最速(当時)6戦目で世界王座(WBC世界ライトフライ級)奪取。14年12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、史上最速(当時)の8戦目で2階級制覇。18年5月にWBA世界バンタム級王座を獲得し、国内最速(当時)の16戦目で3階級制覇。19年5月にWBA、IBF世界バンタム級王者に。同年11月、WBSSバンタム級トーナメント優勝。家族は夫人と1男2女。164・5センチの右ボクサーファイター。

◆テレビ放送 20日午前10時30分よりWOWOWプライムで生放送、WOWOWオンデマンドでライブ配信。