WBC世界ライトフライ級王者寺地拳四朗(29=BMB)の「具志堅超え」は道半ばでついえた。試合後、元世界3階級制覇王者の長谷川穂積から、ねぎらう声をかけられると、涙がこぼれ落ちた。カットした右目上の治療のため、声は残さず会場を後にした。

厳しい戦いだった。8回終了時点で公表された採点は、最大6ポイント差の0-3。9回は捨て身の打ち合い。距離を詰め、矢吹をボコボコにしてKO寸前まで追い詰めたが、ゴングに阻止された。10回も攻勢に出るが、ラウンド中盤から逆襲を食らって最後はレフェリーに抱きかかえられた。初の屈辱だった。

8月末に新型コロナウイルス感染が判明。10日の試合が、この日に延期された。最後の仕上げを行う時期に約10日間、自宅で隔離。最大の敵が減量だった。この時点で約6キロ。寺地は「塩抜き」を選択した。短期間での効果は見込めるが、逆にリスクもある。「トータルでの苦しみを考え、自分は短期間を選択する」と強い気持ちで臨んだ。

計量は無事にクリアしたが、これまでの調整過程からの狂いは明らかだった。大きな目標を失い、父のBMBジム寺地永会長は今後について「今のところ何も言えない」とした。今後進む道の選択には、時間を要しそうだ。【実藤健一】