前王者で同級1位の寺地拳四朗(30=BMB)が、大胆なスタイル変更でベルトを奪還した。王者矢吹正道(29=緑)と昨年9月以来となる因縁の再戦。本来は距離をとる寺地は、開始直後から間合いを詰めるインファイトでペースを握り3回1分11秒、右ストレートでKO勝ちした。引退も考えた元安定王者が、過去をかなぐり捨ててベルトを取り戻した。寺地は19勝(11KO)1敗、矢吹は13勝(12KO)4敗となった。

   ◇   ◇   ◇

「泣かない」と公言していた寺地が号泣した。3回1分11秒、ケンシロウの秘孔を突くような右ストレートが“サウザー”矢吹の顔面にさく裂。背中から落ちた王者は10カウントを告げられ、寺地は飛びはねて泣いた。

「もう幸せのひと言。うれしすぎます。(涙は)あふれ出てきました。うれし泣き。声を出して泣いてしまいました」

昨年9月、9連続防衛を阻まれた矢吹と異例のダイレクトリマッチ(直接の再戦)。ベルトを失った直後は「引退を考えた」という寺地だが、「徐々に悔しさがわいてきた」。自身は常々、「この階級では自分が一番強い」と言う。その言葉を証明できないまま、グローブを置くことはできなかった。「自分が強いという自信を取り戻せた」。

寺地のボクシングスタイルは本来、「距離感」を重視する。ジャブを突き、距離をとりながら勝負どころを見据える。それが前回対戦ではジャッジの支持を得られず、結果的に負けにつながった。そして今回はファイターにモデルチェンジ。指導する加藤トレーナーが「遠くから打っても前回と同じ」と決断し、今年1月から新たな形を構築し、完全にペースを掌握した。

父の寺地永会長が「(スパーリングで)パンチをもらっていたし大丈夫かなと思った」と話したように、距離を詰めればパンチを被弾するリスクも高まる。寺地も「不安はあった」というが強い決意で貫いた。

肩にかけたベルトを「お帰りって感じです」。今後は統一戦、複数階級制覇など目標はあるが未定。「辞めなくてよかったと思う」と拳四朗スマイルを全開させた。【実藤健一】

 

▽元世界3階級制覇王者亀田興毅氏 世界戦独特の雰囲気の中で寺地選手は前回の対戦からしっかり修正してきた。強いチャンピオンだと思った。

 

◆寺地拳四朗(てらじ・けんしろう) 1992年(平4)1月6日、京都府城陽市生まれ。奈良朱雀高→関大。アマ戦績は58勝(20KO・RSC)16敗。14年8月にプロデビュー。15年12月に日本ライトフライ級王者、16年8月に東洋太平洋同級王座を獲得。17年5月にWBC世界同級王座を獲得し8連続防衛。プロ戦績は19勝(11KO)1敗。身長164・5センチの右ボクサーファイター。