ライトフライ級の「頂上決戦」はWBC王者の寺地拳四朗(30=BMB)がTKO勝利で王座を統一した。WBAスーパー王者の京口紘人(28=ワタナベ)から5回にワンツーでダウンを奪い7回2分36秒、まさに“北斗百裂拳”のような猛連打でTKO勝ちした。寺地は20勝(12KO)1敗。初黒星の京口は16勝(11KO)1敗。寺地はWBO同級王座を防衛したジョナサン・ゴンザレス(31=プエルトリコ)に王座統一戦を呼びかけた。

   ◇   ◇   ◇

ケンシロウの“北斗百裂拳”がさく裂した。7回、一気に距離を詰めて寺地が勝負に出た。連打を食らった京口は精根尽き果てたようにロープへ倒れ、レフェリーが試合を止めた。一発目の言葉、「あざーっす! フーッ!!」に死闘を制した思いがあふれた。

最初のラウンドで試合を掌握した。鋭いステップワークで京口をほんろうした。5回にはワンツーでダウンを奪う。しかし、決めにいったところで、逆襲を食らった。「ここでまとめたらいけるという甘い考えが出てしまった。そこは反省点」。コーナーに戻った寺地に苦笑いが浮かんだ。

2学年違いだが、大学時代からお互いにしのぎを削ってきた。関西大の寺地と大商大の京口。対戦成績は3勝1敗と先輩の貫禄で上回っていた寺地が、この大舞台でも押し切った。

自信だけを積み上げてきた。対戦が決まってから、大阪市内のパーソナルジムでハードトレーニング。父で会長の永氏が現役時代から指導を受けていた篠原トレーナーの下で、30歳になった肉体をいじめ抜いた。

篠原トレーナーは寺地を「バランスがいい。何よりスタミナがすごい」と評する。そのメニューは過酷を極める。サイドステップだけで総計1キロ。「マラソンの練習をしたらマラソンランナーになれますよ」と篠原氏。そんな過酷トレーニングで心肺機能を鍛えた。

さらにテーマがあった。それは「ひと伸びするパンチ」。野球選手を題材に体の軸回転を追求。ヤクルトの「村神様」こと村上宗隆内野手、そして「二刀流」エンゼルスの大谷翔平が“先生”となった。8月には米ロサンゼルスに遠征し、大谷のプレーを生観戦。打者のバットスイング、投手の投球動作から体の軸回転を生かして、放つパンチが相手の眼前でさらにひと伸びするすべを学び、この日のTKO勝利につなげた。

試合後は「次、ぜひやりましょう」とWBO王者ゴンサレスに統一戦を呼びかけた。元WBA世界ライトフライ級王者具志堅用高氏の連続防衛の日本記録、13回は果たせなかった。しかし、「もっとレベルアップして4団体統一までいけると思っている」。新たな目標を見据えた拳四朗の目は爛々(らんらん)と輝いていた。【実藤健一】

◆寺地拳四朗(てらじ・けんしろう)1992年(平4)1月6日、京都府城陽市生まれ。漫画「北斗の拳」の主人公ケンシロウから命名。奈良朱雀高-関大。アマ戦績は58勝(20KO・RSC)16敗。14年8月にプロデビュー。15年12月に日本ライトフライ級王者、16年8月に東洋太平洋同級王座を獲得。17年5月にWBC世界同級王座を獲得し8連続防衛。プロ戦績は20勝(12KO)1敗。身長164・1センチの右ボクサーファイター。