プロボクシングWBC、WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ(25日、東京・有明アリーナ)の記者会見が22日、横浜市内で行われ、王者スティーブン・フルトン(29=米国)陣営が、挑戦者で同級1位井上尚弥(30=大橋)の『強すぎるパンチ』に難癖をつけた。

フルトンのトレーナーを務めるラヒム氏が「(井上の)バンテージの巻き方が(一部ネット記事で)論争になっている。試合は公平でなければならない」と発言した。世界戦でバンテージを巻く際には、相手陣営もチェックしているので不正は起きるはずもない。井上のパンチ力はそれほど常識を超えているということでもある。

実は井上は過去の世界戦でも対戦相手に『不正をしているのでは』と疑われたことがある。象徴的だったのが2階級制覇を達成した2014年12月30日に東京体育館で行われたWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ。王者オマール・ナルバエス(アルゼンチン)に初回から2度ダウンを奪い、2回KO勝ちを収めた。

ナルバエスはフライ級王座を16連続防衛し、スーパーフライ級王座も11連続防衛中の名王者で、アマ・プロ通じて150戦超のキャリアで1度もダウンの経験がなかった。しかも、井上は2階級下のライトフライ級から転級してきた挑戦者。一方的なKO負けが信じられなかったのだろう。試合後にトレーナーら陣営が「グローブをチェックさせろ」と申し入れてきた。

大橋会長が当時を振り返る。「トレーナーが『パンチが強すぎる。グローブを確認させろ』というので、その場で井上がはめていたグローブとバンテージを見せた。結局、入念に確認した後、何も不正がないことが分かったトレーナーは『グレートチャンピオン』と祝福したね」。

昨年6月のWBC世界バンタム級王者ノニト・ドネア(フィリピン)との統一戦前のグローブチェックでは、ドネアのレイチェル夫人が井上の使用するグローブが開封済みの箱から取り出されたと抗議。グローブを交換したこともあった。

フルトン本人はまったく気にしていないとはいえ、今回のラヒム氏の発言について大橋会長は「世界戦を19回もやってきて1度も問題はない。何を言っているのか分からない。それほど井上の強さを認めて、警戒しているということだろう。(試合前日のルールミーティングでも)一悶着(ひともんちゃく)あるかもしれないが、本番で勝てばいい」と、意に介していなかった。【首藤正徳】