同級1位の田中恒成(28=畑中)が、同級2位クリスチャン・バカセグア(26=メキシコ)を3-0判定で破り、日本選手3人目の4階級制覇を成し遂げた。21戦目での4階級制覇は6階級制覇王者のオスカー・デラホーヤ(米国)の24戦を上回る最速。最高の形で4階級目のベルトを腰にまとった。4階級制覇をかけて戦い、初黒星を喫した20年大みそかの井岡一翔(志成)戦以来、約3年2カ月ぶりの世界戦で超エリートが輝きを取り戻した。
中盤からはボディー中心に優位に進めた。8回には相手から人生初のダウンを奪った。そのまま流れを許さず判定勝ちした。
「これが欲しかったんでうれしいです。ただ3年ぶりの世界戦で勝ててもちろんうれしいが、満足していない自分がいるのがうれしいです」
「田中家」にとっても思い出深い地となった。両国国技館は3年前、兄の亮明が東京五輪のボクシング男子フライ級で、日本選手同級61年ぶりとなるメダル(銅)を獲得した舞台だ。
当時はコロナ禍で無観客開催で田中も現地での観戦こそかなわなかったが、感激は忘れない。「兄がメダルをとった場所で自分も4階級制覇に挑戦できる。兄弟にとって忘れられない場所になる」と前日計量後に話していた。
「コンディションはバッチリ。この試合に向けて調整してきた。(相手の印象は身長が)高いかなと思っていたが低いぐらいだった。打たれ強い、頑張る選手なんだろうなという印象。激しい試合になると思う。相手が打たれ強いとか、ダウンした経験がないとか関係なく、俺がKOしたいからKOで勝ちたい」
計量後に力をこめて話していた通りの難敵だった。しかし、「これだけ世界王者でいない期間も初めてなんで」という田中のベルトへの欲が恐怖心を上回った。
4階級制覇のその次。田中は「統一戦をしたい」とベストの階級というスーパーフライ級でのベルト統一を熱望した。その中には唯一の黒星を喫したWBA王者井岡との再戦も含まれる。一方で元世界王者の畑中清詞会長(56)は「俺は5階級、6階級も見据えている」と言った。
いずれにしても進む道は明るい。畑中会長は「ここからが田中恒成の新たな物語よ」と表現した。田中がその1ページを力強く開いた。
次の目標については4団体制覇を掲げた。WBAには3年前に敗れた井岡一翔が君臨する。「(IBFの)マルチネスも倒したい。2つの(ベルトを)もって井岡さんとやる。それが井岡さんへのリスペクトにもなる。4団体制覇は必ずしたい」と語気を強めた。
◇ラウンドVTR
1回 開始から相手の出方を探るジャブの突き合い。バカセグアはプレッシャーをかけて右から左ボディーブローを決める。田中は様子を見ているのか手数が少ない。2分すぎにバカセグアの左ボディーブローが再びヒット。バカセグア10-9
2回 開始から両者とも足を使ってジャブを突き合う。1分すぎにバカセグアの右ストレートが浅くヒット。田中は強い左ジャブを返す。2分すぎのバカセグアの連打は田中がウィービングですべてかわす。終盤はバカセグアがプレッシャーをかけてボディーを狙う。バカセグア10-9
3回 開始からバカセグアが前に出て、田中はフットワークを使ってジャブを繰り出す。バカセグアは手数を出すも空振りも多い。1分すぎにバカセグアのボディーブローがヒット。田中もボディーブローを返す。後半もバカセグアが接近戦からボディーを狙うが、田中も右をカウンターで返す。バカセグア10-9
4回 バカセグアは手数を出すが、田中の巧みなディフェンスで空振り。1分すぎから田中が前に出てプレッシャーをかける。中盤は田中の正確な左ジャブがヒット。2分すぎに田中が左ボディーブローから右ショートが当たる。田中10-9
5回 開始からボディーの打ち合い。バカセグアが前進して打ち合いを挑むが、田中はしっかりとガード。50秒すぎに田中の右アッパーが浅くヒット。1分すぎに偶然のバッティングでバカセグアが右目の上から流血。再開後、バカセグアは体をつけて田中のボディーを打つ。田中も応戦して左ボディーブローを決めると、バカセグアが体を曲げて動きが一瞬だけ止まる。終盤は前に出るバカセグアに田中の右のショートアッパーが当たる。田中10-9
6回 開始からバカセグアが前に出てボディーブローをたたきつけるが、田中が右アッパーでバカセグアのアゴをはね上げる。40秒すぎからの体をくっつけての打ち合いは、田中のボディーブローが威力で上回る。中盤以降もボディーの打ち合い。2分すぎに田中の左ボディーブローでバカセグアの動きが一瞬止まる。タフなバカセグアはそれでも前に出て手を出し続ける。田中10-9
7回 開始からバカセグアが前進してがむしゃらに手数を出す。1分すぎに田中が距離をとって左ジャブを連発。バカセグアは体をくっつけて連打してくるが、田中はしっかりとガード。2分20秒すぎに田中の左ジャブから左ボディーブローが決まる。手数はバカセグアだが、有効打は田中か。田中10-9
8回 田中は足をつかって冷静にジャブをつく。バカセグアが出てくると左ボディーアッパーを突き上げる。1分すぎに田中の右アッパーがバカセグアのアゴをはね上げる。それでもタフなバカセグアはパンチを繰り出して前進。1分50秒すぎに田中の左3連発がヒット。バカセグアは手数を出すが有効だがない。2分半すぎに田中の右強打の連発でバカセグアがキャンバスに手をついてダウン。立ち上がったバカセグアに右強打を再び決めるも終了のゴング。田中10-8
9回 田中の右ストレートが先制打に。バカセグアは動きが重くなる。30秒すぎに田中の左アッパーが決まる。中盤は田中が強い左ジャブでペースを掌握。2分すぎから田中の右ストレートが再三ヒット。バカセグアは前に出るがパンチが当たらない。田中10-9
10回 前に出るバカセグアは田中に体をくっつけて連打。田中は冷静にガード。中盤は前進するバカセグアに田中が左ボディーブローで迎え撃つ。後半は田中が軽快なフットワークで距離をとり、残り30秒で右ストレート3連発。田中10-9
11回 バカセグアが頭をつけて田中のボディーを狙う。田中はサイドに回り込んでアッパーを突き上げる。中盤もバカセグアが執拗(しつよう)な接近戦に持ち込むが、田中の右ストレート、左ボディーアッパーがカウンターで決まる。終盤に田中の右ボディーブローでバカセグアが体を折る。田中がボディーブローを連発したところで終了のゴング。田中10-9
12回 開始早々、田中のワンツーが決まる。バカセグアは前進してパンチを振り回すが精度は低い。中盤に田中が左アッパーを決め、右ストレート2連発がヒット。バカセグアがふらつく。終盤も田中が左ジャブでペースを掌握。ロープを背にした田中の右が決まったところで試合終了のゴング。田中10-9

