<プロボクシング:IBF世界ミニマム級タイトルマッチ12回戦>◇30日◇メキシコ

 高山勝成(29=フリー)が、日本初の3団体王者に輝いた。IBF世界ミニマム級王者マリオ・ロドリゲス(24=メキシコ)を3-0の判定で破り、WBCとWBA暫定同級王座に続く3つめのベルトを獲得した。3回にダウンを喫したが、軽快な動きでポイントを奪取した。IBFは世界主要4団体の1つで、日本ボクシングコミッション(JBC)は今日4月1日付で加盟する。日本勢のIBF世界王者は、84年にバンタム級王座を獲得した新垣諭以来2人目となった。

 高山が、新たな扉をこじ開けた。JBCが今日1日に加盟するIBFのベルトを、敵地メキシコで奪い取った。WBC、WBA暫定に続く3団体目の王座獲得は、日本勢では初めて。「歴史的な結果。これからの若いボクサーに夢を与えられる結果になりました」と胸を張った。

 自身のボクシング人生のように、逆境をはね返した。3回に王者ロドリゲスの左フックでダウンを喫した。だが、出し入れ自在のスタイルで試合を支配し、ポイントを奪った。中出博啓トレーナーは「足を使ってヒット・アンド・アウェー。らしさを出せた。倒れたのはオレが無理に『行け~!』と言うたからや」と話し、喜びに浸った。

 結果が発表された直後はアウェーの会場から、大ブーイングが巻き起こった。ロドリゲスの関係者らしき女性がリングに乱入し、高山に殴りかかろうとした。同行した関係者も「暴動が起きかけた」というが、勝ちは勝ちだ。

 05年にWBC、06年にはWBA暫定の世界ミニマム級王者になった。だが、翌07年に王座陥落すると、苦難の道が待っていた。JBCに引退届を出してまで、日本未公認だったIBF王座に挑むも2度失敗。高山は「ボクシングをやめようと思っていた」と振り返る。自衛隊に入ろうと、勉強も始めていた。それでも「自分にはボクシングしかない」と現役続行を決意した。JBC所属ではなく練習環境に恵まれないが、アマチュア選手やキックボクサーを相手にスパーリングを重ねた。大阪市内の公園を走ってスタミナをつけ、鉄棒で懸垂して腕力を鍛えた。「この試合を勝たないと次はない」。84年にIBF初代バンタム級王者となった新垣諭以来となる、同団体のベルトを執念でもぎとった。

 今後の目標については「まだ考えられない。今はゆっくり休みたい」としたが、2団体統一戦や2階級制覇のチャンスが出てきた。ミニマム級には、WBA世界王者の宮崎亮が、1階級上のWBA世界ライトフライ級王者には井岡一翔もいる。不屈の小さな体でつかんだ夢は、これからさらに広がっていく。