ベテランならではの読みが的中した。元関脇で西幕下17枚目の豊ノ島(34=時津風)が、今場所の4番相撲に勝ち、3勝1敗と勝ち越しに王手をかけた。

 東洋大卒で3月の春場所で、三段目最下位格(100枚目)付け出しデビューした若隆景(22=荒汐)と対戦。115キロの細身の体ながら、けれん味のない動きで所要3場所(18勝3敗)で幕下上位まで進んできた相手を圧倒した。

 仕切り中に相手の「(自分とは)初めて対戦する感覚なんだろうけど、動揺が見えた」と心の揺れを見逃さなかった。ならば勝負は一気に…とばかりに、右で張って相手の気勢をそぐと、左をスパッと差し、上体の浮いた相手を右からはハズ押しで攻める速攻相撲で押し出した。

 相手はまだ、まげを結えない、いわゆるザンバラ髪。初土俵から15年半、この日の若隆景が通算223人目の相手だった豊ノ島の口から「勝ってしまえば言えることだけど、ザンバラに負けるわけにはいかない」の言葉が出るのも当然だろう。勝った余裕からか「気迫を全面に出してね。体も小さいんだから」と敗者を叱咤(しった)激励することも忘れなかった。

 もちろん自分も大事な相撲が続く。「人の心配をしてる場合じゃないな」と残り3番に気を引き締めた。「会心の相撲すぎた。言うことがない」の言葉で始まった取材対応。再び「会心の相撲」の言葉で締めくくった。